身近な毒物

健康に良かれと思ってやっていることが、実は悪いことだったと分かったときは、けっこうショックです。体に、というよりは、精神的にきます。

たとえば、以下のようなニュース。

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https://www.theguardian.com/us-news/2025/apr/17/toothpaste-lead-heavy-metals

調査した51ブランドのほとんど(90%)から鉛が検出された。他にも、65%からヒ素、50%から水銀、30%からカドミウムが検出された。しかも、「自然派(フッ素不使用、ラウリル硫酸ナトリウム不使用、パラベン不使用)」を謳う商品から検出されたというのだから、恐ろしい。

「ふーん」と他人事みたいに記事を読んでいたのだけれど、調査したブランドのなかに、僕が使っているメーカーの名前を見つけて、飛び上がった。
「このメーカー、俺が今使ってるやつやん!」

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オーガニック系の商品をメインで取り扱うスーパーで購入した。成分を見て、体に悪いものが入ってなさそうだったから。フッ素が入っていなくても、まさか「鉛入り」とは夢にも思わない。
しかし実際には、鉛が入っていた。毎晩せっせと歯を磨きながら、同時に口腔粘膜にしっかり鉛を塗りこんでいた。自分の愚かしさが嫌になる。
具体的に鉛中毒の症状があったわけではない。しかし、この手の情報は、精神にこたえます。

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https://www.youtube.com/watch?v=PBRiCD1oqE8

鉛の毒性と聞いて、許永中のことを想像するのは僕ぐらいかもしれない。
裏の世界と表の世界のパイプ役。ヤクザの大物から政治家の大物まで、人脈の広さなら誰にも負けなかった。
昭和最大の経済事件「イトマン事件」の背後にいたこの人物の、少年時代のエピソードのなかに、医者として興味を引かれる描写があった。
小学生のころ、好きな女の子がいた。その女の子が見ている前で、同級生からいじめを受けた。「朝鮮人やーい、キムチくさいぞー」
屈辱と羞恥で、いてもたってもいられない。そのいじめっ子を殴ったが、心のざわつきは治まらない。
ちょうど当時、歯磨きチューブが販売され始めた頃だった。「キムチくさい」とバカにされた少年は、食後欠かさず練り歯磨きを「飲む」ようになった。好きな女の子の前で受けた屈辱を、少しでも打ち消そうとするかのように。
やがて少年の皮膚に発疹が出現した。医者に行くも原因は分からない。複数の病院に行ったが、やはり分からない。ふと「ひょっとして歯磨き粉のせいではないか」と思い、歯磨き粉を吸うのをやめると、謎の発疹は消えた。
発疹は歯磨き粉が原因だった。許少年の発疹は、鉛中毒の症状そのものだった。
もうひとつ、許永中は年齢に見合わない若ハゲで、すでに十代の頃にすっかり禿げあがっている有様だった。「これも鉛中毒の影響ではないか」と本人は思っている。

実際、鉛中毒と脱毛の関係を指摘する論文は複数ある。臨床で年齢に見合わない脱毛症を見れば、重金属中毒を鑑別にあげるべきだろう。

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練り歯磨きのチューブ自体が鉛やカドミウムを含む金属製で、歯磨きのなかに重金属が溶けだす。僕の使っているDavidsの歯磨き粉のチューブも金属製だから、しっかり鉛が溶け出していることだろう。
メーカーはこの事実を知っていたが、不都合どころか、むしろ好都合だと考えていた。というのは、鉛は甘いのです。

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ベートーベンが難聴になったのは、ワインの多飲によるもので、当時のワインには甘味付けのために鉛が入れられていたことは皆さんご存知かもしれない。
メーカーとしては、「虫歯を防ぎましょう」という歯磨き粉に、まさか砂糖をいれるわけにはいかない。サッカリンを使うのもイメージが悪い。しかしチューブから勝手に鉛が溶けだす分には、意図的に入れたわけではないから、原材料に書く必要もない。しかも同時に、歯磨き粉が甘くなって、客受けもいい。それに、鉛が含まれているとはいえ、歯を磨いた後、歯磨き粉を飲み込むわけではあるまい。ペッと吐き出すだけなんだから、実害はないだろう。メーカーはそんなふうに考えて、鉛混入を黙認していた。まさか、許少年のように、歯磨き粉をチューチュー吸う人がいようとは、メーカーも想像していなかったわけだ。

後年政財界のフィクサーにのし上がった男の、少年時代の甘酸っぱい挫折。そこに絡んだ、鉛入りの練り歯磨き。
許永中の「人間」がとてもよく出ているエピソードで、何ならイトマン事件の本筋よりも興味をひかれます。

患者から「お酒を飲んでもいいですか」と聞かれると、「いいですよ。ただし、いいお酒を適量でね」と答える。
そのように答えるのは、僕自身が酒飲みだから、ということもあるが(笑)、一応医学的根拠もある。
特に循環器系疾患について、横軸に飲酒量を、縦軸に死亡率をとると、J字型のカーブを描く。全然飲まない人よりも、適量飲む人のほうが死亡率が低いのだ。
コロナワクチン後遺症患者の話を聞いていると、「酒を飲むと症状が明らかに楽になる」という人は多い。
もちろん、どんな酒でもいいというわけではない。患者にこのように言い添えることを忘れない。「日本酒ならちゃんとした純米酒で。醸造アルコール入りとか安酒はやめておこう。焼酎ならプラスチックのボトルに入った工業アルコールまがいの焼酎ではなくて、杜氏が精魂こめて作ったちゃんとしたのを飲んでね」
以前の記事で、焼酎を飲むと血管内のウロキナーゼ(血栓溶解酵素)の発現量が増加し、ワクチン後遺症由来の血栓症に有効である可能性について紹介した。
https://note.com/nakamuraclinic/n/nd48f5756deed


しかし以下のような研究をみると、純米酒なら何でもいいかというと、どうもそういうわけではないようだ。

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日本全国から52の日本酒銘柄を集めて、分析したところ、81%からEUの基準値を上回る殺虫剤が検出された。最も多く検出されたのは、ディノテフランだった。「これを撒いたせいでミツバチがいなくなった」ことで悪名高いネオニコチノイド系殺虫剤です。最大68.2 μg/L検出されたが、地下水を調べると1μg/L以下だった。つまり、水由来ではなく、酒米の栽培時に大量の殺虫剤を撒いているということです。
適量飲酒は体にいいと言いたいところだけど、こんな酒を飲んでいては、自然界からミツバチが根絶されたように、人間も根絶されてしまう気がする。

日本酒がダメならビールはどうかというと、こんな研究がある。

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調べた23銘柄のビールのうち、95%からPFASが検出されたという。1リットルのビールを作るのに、最大7リットルの水を必要とするということだから、PFASで汚染された水を使えば、その分、ビールに残留するPFASも濃縮される。
これは海外の研究だけれど、最近の日本の河川のPFAS汚染ぶりを考えれば、対岸の火事と考えるわけにはいかないだろう。

ワクチンを打たず、医薬品を服用しないよう心掛けていたとしても、身近な日用品や飲食物に含まれた毒物に継続的に曝露して、そのせいで癌になったりする。
「人口削減計画の一環だ!」とまでは思わない。それよりは、製造業者の経済合理性が原因だろう。高価で能率の悪い農薬よりも、安価で殺傷力の高い農薬があれば、メーカーとしてはそちらを使う。国が認めた農薬なのだから、使用量に制限もないのだから、消費者の健康よりも自社の利潤を追求すること自体は、とがめられない。

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本当はこういう危険な物質こそ、国がトップダウンで使用に制限をかけるべきなのだけれど、世界的に禁止される傾向にあるものが日本においてはむしろ規制が緩和されているぐらいなのだから、国に健康をゆだねることはできない。自分で情報を仕入れて、我が身は自分で守るしかありません。

>中村篤史について

中村篤史について

たいていの病気は、「不足」か「過剰」によって起こります。 前者は栄養、運動、日光、愛情などの不足であり、後者は重金属、食品添加物、農薬、精製糖質、精白穀物などの過剰であることが多いです。 病気の症状に対して、薬を使えば一時的に改善するかもしれませんが、それは本当の意味での治癒ではありません。薬を飲み続けているうちにまた別の症状に悩まされることもあります。 頭痛に鎮痛薬、不眠に睡眠薬、統合失調症に抗精神病薬…どの薬もその場しのぎに過ぎません。 投薬一辺倒の医学に失望しているときに、栄養療法に出会いました。 根本的な治療を求める人の助けになれれば、と思います。 勤務医を経て2018年4月に神戸市中央区にて、内科・心療内科・精神科・オーソモレキュラー療法を行う「ナカムラクリニック」を開業。

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