「イベルメクチンが癌に効く」という主張の真偽を確認するために、フロリダ州で過去最大規模のコホート研究が行われた。
197人の癌患者に対して、イベルメクチン25㎎、メベンダゾール250㎎を6か月間投与したところ、以下のような結果が出た。
(なお、イベルメクチン、メベンダゾール、フェンベンダゾールなどは、いわゆる「ゾール系駆虫薬」と分類される薬で、作用機序はだいたい同じです)

参加者の48.4%が腫瘍の退縮、完全消失、36.1%が病勢安定、15.6%が進行を報告した。
要するに、参加者の半数近くが癌が寛解し、半数(36%+15%)が「変化なし」か悪化した。寛解率50%というのは、極めて優秀です。
しかも離脱率が少ない。一般的な抗癌剤では、副作用が強く出て、もっとたくさん脱落者が出るものだけど、この研究では副作用はほぼ見られていない。
標準治療(化学療法(27%)、放射線(21%)、手術(19%))を併用していた人も相当数いて、イベルメクチンの単独投与による結果ではないことに注意すべきだけれど、それでも、奏効率50%というのはすごいことだ。
もちろん、6か月という期間限定の結果なので、現時点で手放しで礼賛することはできない。寛解に至った人がそのまま再発することなく経過するのかどうか、それは今度の課題だろう。
僕の臨床では、シェディングに対してイベルメクチンを処方することはしょっちゅうあるけど、癌に対してはあまり積極的には使っていない。
たとえば、以下のような事例。

51歳の肺癌の女性。2023年頃から呼吸苦が出現し、精査すると肺癌(ステージ3)と診断された。
当院受診が2023年6月だけれど、僕のふがいなさで、微熱、体重減少、不眠など、症状が着々と進行した。2023年12月フェンベンダゾールを処方した。

体重減少、筋力低下など症状の進行を思わせる所見があるものの、息切れの軽減、解熱、ゴルフボール大の頸部リンパ節転移の縮小など、本人はフェンベンダゾールの効果を実感していた。
ぜひともその後の経過をフォローしたかったのだけれど、遠方からの来院が大変で、近医への紹介を希望されたので、その後の経過は不明です。

51歳男性。11月の職場健診で肺癌の可能性を指摘され、他院で精査したところ、肺癌(ステージ4)と診断された。11月までは元気に働けていたのに、12月には癌性疼痛で動けなくなるほど急速に進行している。
イベル、フェンベンを処方したものの、その後の来院がないので、効果は不明です。
上記の2症例について、共通点があります。それは、
・どちらも若年(51歳というのは、医療現場では「若い」と考えます)
・急速進行する肺癌
・スタチン服用歴
・鉄剤(鉄注射)使用歴
・コロナワクチン未接種
ワクチンの複数回接種者ならターボ癌を疑うところだけど、未接種でありながら癌の進行が早い。となれば、スタチン、鉄剤の服用がかなり怪しい。
イベルメクチン(IVM)がなぜ癌に効くのか、その機序については相当分かっている。

なんと、9通りもの作用機序が提唱されているのだけれど、今回はmTOR抑制を介した抗癌作用に注目したい。
しかしその前段として、鉄剤の投与で癌は増殖します。

癌細胞は、正常細胞よりも増殖スピードが速い。当然、癌細胞の内部で、DNA合成がバンバン行われているわけですが、鉄はこのDNA合成に必須です。具体的には、リボ核酸からデオキシリボ核酸を作る際、リボ核酸還元酵素という酵素が作用するのですが、この酵素が活性を持つには鉄が必須です。
実際、高鉄食で腫瘍の成長が促進されることが分かっているし、逆に、鉄制限食による癌抑制、鉄キレート剤による抗癌作用も分かっている。
だから、上記の2症例が長らく鉄剤を服用していたことは、癌のリスク因子です。
もうひとつ。スタチン(コレステロール降下薬)は発癌リスクを高めるという研究がある。

シンバスタチンを服用する4万7千人を6年間にわたって追跡した日本の研究で、「総コレステロールが極めて低い患者は、他の患者群に比べて癌による死亡の相対リスクが高かった。実際、総コレステロールが劇的に低下した群では、癌による死亡率が330%増加していた」との指摘がある。

ハワイ在住の日系人を対象とした研究でも、コレステロールと癌死亡率の負の相関が確認されている。

スタチンを飲めば、コレステロールが低下すると同時に、コエンザイムQ10、ビタミンK2、グルタチオンなどの栄養素も低下する。
つまり、スタチンが体にいい理屈、コレステロールを下げて体にいい理屈なんて、僕はないと思っています。
上記の2症例は、鉄剤のみならずスタチンも年単位で飲んでおられました。このあたりが癌の発生や進行に影響したのかなと考えます。

さて、IVMが癌に効く理屈として、mTOR抑制に注目します。
先述のとおり、癌細胞は内部にフェリチン(貯蔵鉄)の形で鉄を大量にため込んでいるのだけど、IVMがmTORを阻害すると、フェリチンが分解され、大量の遊離鉄が放出されます。フェリチン1分子あたり5000個近くの鉄原子が放出され、むき出しの鉄は大量の活性酸素を発生させます。この活性酸素が細胞膜に含まれるPUFA(多価不飽和脂肪酸)の過酸化を促進し、細胞膜が維持できなくなり、癌細胞が壊れる。
また、IVMによりmTORが阻害されると、GPX4(グルタチオン還元酵素)の活性が低下する。グルタチオンは細胞膜の過酸化をストップする火消し役だけど、その機能が阻害されるせいで、細胞膜の過酸化が止まらず、癌細胞が壊れる。
このように、遊離鉄による活性酸素の大発生および細胞膜の過酸化による細胞死を、特に鉄による細胞死ということでフェロトーシス(ferroptosis)と呼びます。

この理屈でいえば、IVMによる癌治療中は、鉄キレート剤(デフェロキサミン)やビタミンE、グルタチオンなどの活性酸素抑制剤は服用すべきではないということになります。
意外ではないですか?
一般に、ビタミンEやグルタチオンといえば、体にいい物質だと思われている。しかし、IVMによる抗癌作用は、いわば、酸化療法(鉄による活性酸素の大発生と細胞膜の過酸化)なので、抗酸化作用のある物質はこの治療の妨げになります。
もっと言えば、IVMとスタチンの併用は、治療効果の向上が期待できます。

何を言っているか、わかりますか?
先ほど、「スタチンで癌リスクが上がる」と言いました。その舌の根も乾かぬうちに、「イベルメクチンとスタチンの併用で抗癌作用が高まる」と言っています。
スタチンは体に悪い。飲むべきではない。
これが僕の基本的な考え方です。しかし、なぜ体に悪いのか。スタチンの服用により、CoQ10やグルタチオンが枯渇し、抗酸化力が低下し、細胞膜が壊れやすくなり、様々な病気にかかりやすくなるからです。
しかし、壊れてしまうのが健康な細胞なら困りますが、癌細胞なら話は別です。
癌細胞の内部で活性酸素を大発生させ、グルタチオンによる活性酸素中和を阻害し、細胞膜を過酸化に追い込み、癌細胞を破壊する。
つまり、この場合、スタチンは抗癌剤として機能しているということです。
実際、海外ではHomer Lim医師のように、IVMとアトルバスタチンの併用により成果をあげている先生がいる。
ここでは、考え方の修正を迫られます。
「健康な人(癌ではない人)はスタチンを飲むべきではない。しかし、IVMによる癌治療においてはその限りではない」
さらに、「ビタミンEやグルタチオンは本来健康に資するものである。しかしIVMによる癌治療中は服用を控えるべき」
という具合に、IVMによる癌治療の際には、従来の思考パラダイムを裏返す必要があるわけです。
僕はこのあたりに、ちょっと抵抗感があります。理屈上は納得できる。「でも本当にそれでいいのか」という懸念がぬぐえないんですね。
人間の体を構成する細胞のうち、癌患者とはいえ、99%は正常細胞でしょう。1%の癌細胞を叩くために、99%の正常細胞に負担を強いるような治療は果たして本当に大丈夫なのか、という疑問です。
僕がイベルメクチンによる癌治療に興味を持ちながらも、そちらの方向にいまいち舵を振り切れないのは、そのあたりが原因です。
でも、冒頭にあげた研究(寛解率50%)は無視できないと思っている。ポジティブなデータがもっと蓄積されれば、使用を躊躇すべきではないだろう。臨床医は結果がすべて、だからです。

もうひとつの懸念としては、IVMが「誰にも安心して飲める薬」というわけではないことです。
癌治療が目的ではないとしても、シェディング対策とかワクチン後遺症の治療として、イベルメクチンを飲む人はたくさんいます。実際僕もよく処方します。
でも、若い女性が服用を希望したときは、処方をちょっとためらいます。妊婦が飲めば催奇形性があることは、添付文書に書いてあることです。若年女性となれば、いつ誰と恋愛関係を持つか予想がつかないものだから、このリスクを認識しておくことは重要です。
あと、服用後、副作用が出る人が一定数、確かにいます。「下痢をする」、「ふらつく」、「手足に力が入らない」とか、何かしらの不調が出る。添付文書では「過量投与」で起こり得る副作用と書いてあるけど、普通量(12mg)でも全然起こります。
皆さんご存知の通り、この薬は本来、抗寄生虫薬ですが、どのようにしてその作用を発揮するかを理解している人は、あまりいないように思います。

IVMは神経、筋細胞にあるグルタミン作動性Clチャネルに結合し、これによりClに対する細胞膜透過性が亢進し、神経や筋細胞の過分極が生じ、寄生虫は麻痺し、死にます。
このグルタミン作動性Clチャネルは、無脊椎動物に特有のもので、人間に存在しないことが、IVMの選択毒性の根拠になっているのですが、本当のところ、IVMは、GABA作動性Clチャネルに対して弱いながらも作用します。「弱いながらも」、人間の神経や筋細胞に作用するということです。

IVMは肝酵素CYP3A4により代謝され、糞中に99%排出される。また、脳血管内皮にあるP糖蛋白(排出ポンプ)のおかげで、IVMが脳神経に入ることはない(BBB;血液脳関門)。これが原則です。
しかし一部の人、たとえば、CYP3A4酵素を阻害する薬(これはP糖蛋白を阻害する薬でもある)を飲んでいる人では、IVMがBBBを通過する可能性があるし、遺伝的にCYP3A4酵素の働きが弱い人では、薬を飲んでいなくても、リスクがあるでしょう。
CYP3A4を阻害する薬として、ベンゾ系、バルプロ酸、スタチン、Ca拮抗薬、ステロイド、リドカインがある。
使用頻度の高い薬ばかりなので、毎日飲んでいる人もいるだろう。こういう人では、IVMの副作用が出やすい可能性がある。
IVMは基本的には、リスクの少ない安全な薬だと思います。でもそれは抗寄生虫薬として適切に使用されたならば、の話であって、シェディング対策として毎日飲むとか、癌治療のために飲むとか、本来の目的ではない飲み方をするときには、僕としてはどうしても慎重になる。あまり万能薬として持ち上げる昨今の風潮は、ちょっとどうかなと思っています。