佐々木さんの施術

診察を終えて、患者が診察室を出ていこうとしていたときに、ふと思い出して、「そういえば、今日、うちの6階に理学療法士の佐々木さんが来ています。歩きにくいとか、指が動きにくいとか、整体的なことを相談できますよ」と伝えると、興味を持たれて、「それならぜひ相談してみます」

佐々木さん「今日飛び込みで来られた患者さん。施術すると、指が動くようになりました。満足して帰られましたよ」

不思議だ。すでにこういう症例はたくさん見ている。それでも、「不思議だ」という感覚が消えない。それは、僕が「僕の理屈」で考えるからです。あの患者は抗癌剤治療中で、抗癌剤の副作用による末梢神経障害で指が動きにくくなっている。だから僕は「毒性による神経障害だから、毒出しをしないと治らない」とか「毒によりビタミンが消耗しているから、それを補わないと治らない」と考える。
でも佐々木さんは、抗癌剤治療中とか、そういう背景はあまり考えない。純粋に、関節と筋肉の連携という観点から見る。実際そういうアプローチで、本当に指が動くようになるのだから、僕は何も言えなくなってしまう。

佐々木さんは「いや、『神の手』でも何でもありません。誰でも学べる技術です」という。別に謙遜ではなく、本気でそう言っている。「僕自身も教わったものだし、僕から後輩とか同僚にも教えてる。秘密の奥義でも何でもありません」

なぜ、佐々木さんの施術で改善するのか。前に聞いたことがあるけど、
https://note.com/nakamuraclinic/n/n284c46de6baa
何度聞いても忘れてしまう(笑)もう一回、その理屈を聞いてみよう。

「たとえば脳梗塞が起こって、麻痺が起こって、筋力が低下する。患者さんは、筋力が落ちた状態で日常生活をしないといけない。そうすると、関節機能の異常が起こって、この関節異常でも見かけ上、筋力が低下する。だから大事なのは、患者の筋力低下がどっちから来ているのか判断することです。
脳梗塞に直接起因するものなら、僕にもすぐに治すことはできません。でも、それ以外なら、すぐに結果が出る。こういう人は案外多いです。「動くようになった!すごい」と喜んでくれるけど、大したことはしてません。
まず、関節機能異常を取っ払う。そうすることで、本当の麻痺なのか、「麻痺のように見えるもの」なのか、判断できる。
本来脳梗塞としては治っていて、画像上も改善しているのに、「なぜか力が入らない」という人は、そのあたりの原因と結果がごっちゃになってる。
筋力低下とひとくちに言うけど、原因は複数あって、まず、僕のほうで除去できるものは除去する。でないと、頭から来てるかどうかも分からないので。

今日、飛び込みで来られた人は、抗癌剤で指の動きがおかしくなった。「抗癌剤が原因」それはそうでしょう。でも、そういう人も、当然指を使う。無理して使うから、関節がおかしくなる。本来、指の関節には「遊び」がある。でも関節機能異常で、その遊びがなくなってる。
この人の場合、そこに椎間板ヘルニアもあって、それが重複して指が曲がらなくなってる。僕には薬の影響を除去することはできない。でも、それ以外の影響は除去できる。それで動くようになりました」

うーむ、分かったような、分からないような(笑)

ある70代の夫婦がいる。旦那さんは脳梗塞の既往があり歩行がふらつく。奥さんは筋力低下があり、家事をするのも億劫だった。
初めて施術を受けた後、夫婦そろって佐々木さんの熱烈なファンになった。
2026年1月10日再診。
旦那さんがいう。
「佐々木さんの施術は、今日で4回目です。初めて受けたときから、効果を実感した。脳梗塞の後遺症で、右肩が下がっていたのが、元に戻った。効果は10日程で切れてしまったけど、佐々木さん『今度はもっと持つようにしましょう。1か月は持つように』って。
2回目だったか、足の施術を受けて、左脚に体重が乗るようになった。それで、歩くスピードも速くなった。
施術の効果が強すぎると、前のめりになってしまうので、元に戻してもらう。そういうふうに、佐々木さんの調節次第で、動きが全然変わる。
効果を実感、なんてレベルじゃない。信じざるを得ないですよ。本当に体が変わるんだから。
失礼な話、最初はちょっとバカにしてたんです。マッサージでしょ、みたいな。
でも、施術を受けて、肩がダランと下がっているのが治ったし、歩いていても左側にちゃんと体重が乗るのが分かる。35年前の麻痺ですよ。もう治らないものだと思い込んでいた。本当に驚きました」

2026年3月10日再診
「歩行の安定のために装具を使うのですが、佐々木さん『年内に外すことを目標にしましょう』と。あと、家で歩くときはスリッパをはいていますが、それをやめて靴下か、はだしにしましょう。靴下をはくにしても滑り止めの靴下にして、と。そういう生活上のアドバイスもありがたい。
マッサージではないんです。佐々木さんは『整えるだけ』と言ってますが、私も何をされてるのか、よく分からない(笑)
年齢的に、足の筋肉はやせてるけど、左のほう、悪い側のほうが、力がついてる感じです」

佐々木さん
「脳梗塞による麻痺。それはそうだけど、動きにくい体でどんどん動くから、それで関節に負担がかかって、余計に動きにくくなって、「麻痺っぽさ」が出てくる。この「麻痺っぽさ」をとるのが僕のやっていることです。

たとえば、慢性の間質性肺炎のおばあちゃんを見てるんだけど、僕が施術を続けるうちに、肺活量が上がってきた。当然、僕には間質性肺炎は治せない。でも、関節の動きをよくすることはできる。それで肋骨の動きがよくなって、横隔膜の動きがよくなって、換気量が増えて、肺活量が増えた。『治った』とは言わないけど、生活の質がよくなって、感謝されます。

関節の動きをよくする技術というのは、関節ファシリテーションといいます。関節の中の動きを正常化する技術で、宇都宮初夫先生が創始者です。いや、創始者なのかな。そのへんは僕にも分からない。少なくとも、僕はこの人から技術を学びました。
初めて見たのは25年前。最初は信じられなかった。

理学療法の免許をとって、僕が初めて就職した病院では、上司が2人いたけど、何もできない人だった。患者の体を一応さわる。でも全然治らない。
こんな職場にいたらダメになる、と思った。
たまたま友達が「岡山大学でおもしろい手技をする先生がいるよ」というので、行ってみた。最初、信じられなかった。『腰で全部解決するだって?そんなはずがない』と思った。でも、実際にその場で治った。
僕はまず、理論は後でいいから、まずは実践しようと思った。関節ファシリテーションの技術を身に着けて、いざ、自分の患者に試してみた。
初めて試した患者のことは忘れない。
3か月前にかかとの骨を骨折した男の人。学校の教師をしている人。
3か月ずっと痛くて、足が地面につかない。医者からは『もう骨はくっついてるから、足をつけてもいいよ』と言われてるけど、そう言われたって、痛いからつけない。本人は『もう社会復帰は無理かも』と半ばあきらめてた。
この人に試してみると、その瞬間、足がついた。すごく喜ばれたけど、内心では僕が一番喜んでいた。『これは本当にすごい』と思って、本格的にのめり込んだ。

なぜ腰をつつくと、かかとがよくなるのか。なぜ肋骨をつつくと、指がよくなるのか。
一応、理論はある。研究者はそこを追究するけど、僕は臨床家だから、結果がすべて。まずは技術をしっかり習得したかった。
宇都宮先生は、それをたったの5千円で教えてくれた。セミナー参加費5千円。25年前に学んだ技術。50万円といわれても、500万円といわれてもおかしくない。そう思うくらいすごい技術。
僕はそれがなければ、とっくの昔に理学療法士をやめていたと思う。理学療法の免許をとった1年目にこの技術と出会えて、本当によかった。
僕がすごいのではありません。この技術がすごいんです」

佐々木さんは現在、隔週で月2回、土曜日に来られていますが、金曜日も来てくれることになりました。月4回、当院で働いてくれる格好です。
僕の患者が多いけど、僕の患者ではない人も最近増えてきました。つまり、佐々木さんの施術目当てで、当院に来られるわけです。もちろんそれで全然オッケーです。
土曜日の予約はかなり先まで埋まっていますが、金曜日は現状あいてるので、興味のある方は受けてみてください。

>中村篤史について

中村篤史について

たいていの病気は、「不足」か「過剰」によって起こります。 前者は栄養、運動、日光、愛情などの不足であり、後者は重金属、食品添加物、農薬、精製糖質、精白穀物などの過剰であることが多いです。 病気の症状に対して、薬を使えば一時的に改善するかもしれませんが、それは本当の意味での治癒ではありません。薬を飲み続けているうちにまた別の症状に悩まされることもあります。 頭痛に鎮痛薬、不眠に睡眠薬、統合失調症に抗精神病薬…どの薬もその場しのぎに過ぎません。 投薬一辺倒の医学に失望しているときに、栄養療法に出会いました。 根本的な治療を求める人の助けになれれば、と思います。 勤務医を経て2018年4月に神戸市中央区にて、内科・心療内科・精神科・オーソモレキュラー療法を行う「ナカムラクリニック」を開業。

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