抗生剤を処方されたときには

57歳男性がこんなことを言う。
「3か月くらい前から、なんとなく調子が悪い。疲れやすいし、寝ても疲れがとれない。というか、寝つきが悪いし、しょっちゅう中途覚醒する。朝4時とかに目が覚めて、いっそそのまま起きようかと思うけど、しんどいので、そのまま横になってる。
別に熱はないし、食事も普通に食べてる。
あ、ワクチンは打ってませんよ。息子が「絶対打つな」っていうから。先生のブログとか読んでて、今日ここに来たのも息子に勧められたから。
特に運動習慣はないけど、仕事柄、かなり歩いてる。でも最近、足と腰が痛い。筋肉痛みたいな、妙な痛みがある。整体に行くと楽になるから、けっこうな頻度で通ってる。手とか足裏がしびれる感覚があって、血の巡りが悪いのかな。
眠れないせいか、精神的にも不安定で、些細なことで妻と口論になったりする。我ながら「なんでこんなにイライラするんだろう」って思う。
これ、何でしょうか。ゲルマニウムがいいっていうので興味あるんですけど、よくなりますかね。
基本、健康体のつもりです。血圧が高いので、数年間降圧剤を飲んでたけど、飲まなくても150くらいで、子供が「それ、昔の基準なら正常値だよ」って。それで飲むのをやめた。
食事は、妻が気を使ってますよ。四毒抜きっていうんですか。お菓子とかパンは1年ほど前から控えめにしてる。小麦減らしてから、確かに体が軽い気がします」

さて、どうしたものか。
主訴としては、疲労感、睡眠不良、精神不調(不安、イライラ)、腰痛、筋肉痛、手足のしびれ。
一番引っかかるのは、筋肉痛。特に激しい運動をしたわけでもないのに、筋肉痛というのは、普通じゃない。この手の筋肉痛は、毒物に対する反応です。スタチン飲んでる人の筋肉痛とか、抗癌剤治療中の人の筋肉痛とか、薬(=毒)が筋細胞に入って、そこで活性酸素がわいて、マクロファージが暴れ狂って、炎症を起こしている。そういうイメージです。
手足のしびれ、というのも気になる。これも普通じゃない。糖尿病とかビタミンB1欠乏が思い浮かぶけど、四毒抜きをして食事に気を使ってるなら、それはなさそう。しびれは神経障害で、神経の流れに異常がある。神経と血流はワンセットだから、要するに、エネルギーの流れが悪い。ミトコンドリア障害を疑わせる所見で、やはり、何らかの毒物曝露があると思うんだけど、、、
結局のところ、原因はよく分からない。この現代社会は毒物まみれだから、むしろ特定できないほうが普通だ。それでも、もうちょっと探りを入れてみる。
「庭に雑草が生い茂る。いちいち草むしりが面倒なので、除草剤をまいて一網打尽。そういうこと、してないですか」
「最近暑くなってきて、ゴキブリとか蚊が増えてきました。虫が大嫌いで、見つけた瞬間、即、殺虫剤を大量噴霧。あるいは、古い木造家屋にお住まいで、最近シロアリ駆除の処置を業者にやってもらった。そういうことはないですか」
「家の隣に畑があって、季節柄、そこで農薬の大量散布。そういうこと、されてませんか」
「家の近くにマンションがあって、そこの屋上に5Gの電波塔が立った。あるいは、最近、家にスマートメーターが取り付けられて、そこから強烈な電磁波が出てる。そういう可能性はないですか」
いくつか毒物曝露の可能性を挙げてみたけれど、「いや、ないですね」と空振り。
最後、一応の確認として「お薬手帳、持ってますか」
パラパラと見ていると、3、4か月前に耳鼻科から抗生剤を処方されている。
『レボフロキサシン500㎎』
これ、どういうことで受診しましたか?
「副鼻腔炎ということで、5日間だけ飲みました」
症状が出始めたのって、抗生剤を飲んだ後じゃないですか?
「確かに。言われてみれば、そうですね」

画像

抗生剤というのは、基本的に飲むべきではないと思っている。そう思うのは、まず、理屈として、抗生剤を経口摂取しても、抗菌性を発揮するだけの血中濃度に到達しないからです。シャーレ上の細菌に抗菌性を発揮したとしても、人体では無意味です。いや、無意味で済めばまだいいほうで、肝心の患部の菌は殺さないけれど、腸内細菌だけは壊滅的に破壊する。メリットはゼロで、デメリットしかない。
その理屈でいえば、点滴投与なら理解できます。たとえば、蜂窩織炎の患者に対してセファゾリンを静注する。そういう使い方なら、耐性菌を作りにくく、腸内細菌への影響は比較的少なく、狙った菌だけを殺す。少なくとも、理屈には合っている。

みなさん病院に行くと、主治医はさも当たり前の顔をして、抗生剤を処方します。
「中耳炎です。お薬出しておきますね」
「扁桃炎です。お薬出しておきますね」
「ニキビひどいですね。お薬出しておきますね」
「歯の処置をしたので、お薬出しておきますね」
そしてみなさん、当たり前のように飲みます。
それで本当に大丈夫ですか、ということです。
今の時代、ネットで何でも調べられる時代です。どういうタイプの抗生剤で、どういう副作用があるのか、まず検索しましょう。

画像

抗生剤とひとくちに言っても、どのように抗菌性を発揮するのか、タイプによって全然違います。当然、副作用も全然違ってきます。

画像

抗生剤を飲んで、たとえば下痢をしたなら「薬のせいかな」と思う。でも、「足腰が痛い」とか「眠れない」のが、まさか抗生剤のせいだとは思わない。それで延々飲み続けて、最悪の場合、命を失う。

画像

ユーチューバーというのは因果な商売で、自分の私生活の切り売りで金を稼いでいる。某海外ユーチューバーが、シプロフロキサシンの服用を始めて、眠れなくなり、最終的に死亡に至ったが、彼は自身の体調不良の経過を動画に収めていた。結果的には、最も分かりやすい形でこの薬の恐ろしさを啓蒙することになった。

画像
https://www.dailymail.com/health/article-13220681/killer-antibiotic-stroke-rambo-arthritis-drug.html

服用開始から数日で副作用が現れるが、しかし副作用は数日では終わらない。神経障害、認知機能低下、腱障害などが長期に持続することから、海外では 「フルオロキノロン関連障害 fluoroquinolone-associated disability (FQAD)」という概念が提唱され、規制当局から注意喚起が行われているが、ほとんどの医者は知らない。だいたいの医者は、「医師免許をとるまで」の知識で臨床をやっているもので、常に知識のアップデートを怠らない医者というのは、みなさんの予想以上に少ないものです。

画像

この抗生剤に限らず、薬の大半が脂溶性です。なので、簡単に細胞内に侵入します。
フルオロキノロン(FQ)の危険性の本質は、そのミトコンドリア毒性にあります。細菌のミトコンドリアを攪乱する目的でこの薬を使うのですが、ミトコンドリアは人間の細胞内にもあって、これがやられます。そこから、様々な副作用が起こります。
また、フルオロ(fluoro)という名前が示す通り、分子構造の内部にフッ素を含んでいて、フッ素は体にとって、シンプルに毒です。

画像

この抗生剤の特殊性というか、コラーゲンの分解を促進するので、たとえばアキレス腱断裂が起こります。すでにコラーゲンが減少している高齢者ではこの副作用が出やすい。マラソンが趣味だった85歳男性は、この薬を服用したわずか2日後、歩行困難となりました。たとえば尿路感染症の高齢者にFQを投与するというのは、臨床現場で当たり前に行われていますが、FQのせいで寝たきりになるような事例は、潜在的に相当数あるはずです。
はっきり、医原病(iatrogenic disease)です。よかれと思って投与した薬で、かえってその人の生活の質を破壊してしまったということです。


もうひとつ、気をつけたいタイプの抗生剤は、第3世代セフェムです。

画像

10年ほど前の医療現場では、居酒屋で「とりあえずビール」ぐらいの勢いで、「とりあえずセフェム」というのが普通だった。
第3世代セフェムは、多くの菌種に効く広域スペクトラムが特徴です。「多くの菌を殺してくれるなら、それはすばらしいじゃないか」と思われるでしょうが、抗菌薬の分野において「広く、浅く効く」ことは、いわゆる善玉菌の虐殺にしかなりません。腸内細菌叢が壊滅的な打撃を受けるだけのことで、肝心の悪玉には全然効かない。むしろ、善玉菌だけが死んで、悪玉菌だけがはびこることになる。
心ある感染症専門医が声をあげたことで、第3世代セフェムへの問題意識が高まり、10年前より使用率は減少しましたが、それでも、不勉強な歯医者なんかは今でも当たり前にこの抗菌薬を処方します。

さて、上記患者の症状がFQ系抗生剤の副作用によるものだとして、治療をどうするか。
FQ系によるミトコンドリア障害と酸化ストレス(活性酸素の大量発生)が病態の根本であるなら、それを緩和することが治療になるはずです。
FQ系はMgやZnなどの2価のミネラルをキレートするので、Mgはしっかり補いたい。フッ素がヨウ素の排出を促進するので、海藻類も意識的にとりたい。ミトコンドリアの回復にはコエンザイムQ10やエース(ビタミンA、C,E)が助けになる。
でも、あまりサプリ漬けになっては、胃腸が疲れてしまうから、サプリは数を絞って、できるだけ食材から摂取したい。
FQ系障害は難治です。そもそもこんな薬は飲まないことが重要です。

【告知】

画像

2026年7月26日、東京でゲルマニウムの一般セミナーを行います。
興味のある方はご参加ください。
会場参加 https://organogermanium0726.peatix.com
オンライン参加 https://onlinege0726.peatix.com

>中村篤史について

中村篤史について

たいていの病気は、「不足」か「過剰」によって起こります。 前者は栄養、運動、日光、愛情などの不足であり、後者は重金属、食品添加物、農薬、精製糖質、精白穀物などの過剰であることが多いです。 病気の症状に対して、薬を使えば一時的に改善するかもしれませんが、それは本当の意味での治癒ではありません。薬を飲み続けているうちにまた別の症状に悩まされることもあります。 頭痛に鎮痛薬、不眠に睡眠薬、統合失調症に抗精神病薬…どの薬もその場しのぎに過ぎません。 投薬一辺倒の医学に失望しているときに、栄養療法に出会いました。 根本的な治療を求める人の助けになれれば、と思います。 勤務医を経て2018年4月に神戸市中央区にて、内科・心療内科・精神科・オーソモレキュラー療法を行う「ナカムラクリニック」を開業。

CTR IMG