以前の記事で、タバコあるいはニコチンの健康効果について紹介しました。
『タバコの効用』https://note.com/nakamuraclinic/n/n3eccd32a2cc5
『ニコチンの効用』https://note.com/nakamuraclinic/n/n596929bac99f

記事中、ケネディ厚生長官の「ニコチンに発癌性はない。それどころか、健康効果さえある」という言葉を紹介しました。
ただし、ケネディは喫煙を勧めているわけではありません。ベープと紙巻タバコを比較する文脈で、「中国製のベープは危険だ。一般に販売されている普通のタバコが体に悪いのはもちろんだが、ニコチン自体は癌を起こさない。NIHの研究では、ニコチンでアルツハイマー型認知症の発症が減少するメリットさえある」としたうえで、さらに吸い方について、
「じゃあニコチンを補給しようという場合、ベープで吸う方が普通に火をつけて吸うよりも健康的かというと、そんなことはない。ニコチンパウチで経口摂取するのがベストで、ベープは次善策だ。一番よくないのは、普通のタバコ(cigarettes)だ」
ということで、タバコを肯定しているというよりは、ニコチンに対する誤解を解きたいというのが発言の真意だと思います。
僕もだいたい同意見です。そこらへんの自販機で売っている普通のタバコには大量の添加物が含まれていて、その有害性は明らかです。しかし、ナス科タバコ属に含まれる植物性アルカロイド(ニコチンなど)には、さまざまな健康効果がある。
僕は臨床でよくニコチンパッチ(貼付型)を使いますが、たとえばコロナ後遺症が劇的に改善する事例を複数見てきました。ニコチンに対する世間のイメージと実際の薬効の間に、ものすごく大きなギャップが存在することは確かだと思います。
実際のところ、15世紀コロンブスのアメリカ大陸上陸以来、タバコは長らく医薬品として使われてきました。燃焼させて煙を吸うだけではなく、煮汁を飲んだり、葉を砕いて軟膏や湿布薬として使ったり。
薬効を示す疾患は多岐にわたり、潰瘍性膿瘍、カタル(粘膜腫脹)、瘻孔、外傷、下痢止め、麻酔薬、風邪、喘息、咳、梅毒など、挙げ出せばきりがない。他に治療法がない症状に対して著効を示したことから、当時の医学者は「このハーブは神が与えた万能薬である」とタバコを賞賛しました。
そう、シンプルに考えて、タバコはハーブの一種なんですね。葉っぱを巻いて、先端に火をつけて、煙を吸引している。外形だけ見れば、ある種のアロマテラピーに過ぎないのだけれど、21世紀の現代において、「タバコ」やその成分の「ニコチン」は毒物の代名詞のように忌み嫌われている。
僕は、医者として本当はそんなことをすべきではないけれど、そのイメージに忖度して、患者にタバコを勧めることはしない。潰瘍性大腸炎とかパーキンソン病とか、タバコの有効性が明らかな疾患であっても、「タバコを吸いなさい」とはちょっと言えない。でも本音としては、「ちゃんとしたタバコであれば、吸ってもいいんだよ」とは思っている。
ケネディは「ニコチンに発癌性はない」と言ったけど、僕としてはもっと踏み込んで「タバコには発癌性はない。それどころか、抗癌作用さえある」と本当は言いたい。

様々な疫学研究で、喫煙者のほうが非喫煙者よりも癌リスクが低いことが示されている。注目すべき点は、これらの研究のほとんどで、吸っているタバコの種類を区別していないことです。添加物が含まれないシガー(乾燥したタバコ葉をシンプルに巻いたもの)なら、癌リスクが低下するのは分かる。でも、ほとんどすべての疫学研究は、添加物を大量に含む一般の紙巻タバコを吸う人を対象にしている。それでも喫煙者の癌リスク低下が示された。これは驚くべきことです。「本来のタバコ」には添加物の発癌性を超えるほどの抗癌作用があることが示されたわけだから。
機序としては、たとえば前立腺癌、乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、乳癌など、エストロゲンが関与する癌については、タバコの抗エストロゲン作用がそのまま抗癌作用として機能します。

婦人科系の癌の大半は、エストロゲン(特にエストラジオール)が増殖を担っている。アンドロゲン(ざっくり男性ホルモン)に酵素アロマターゼが作用してエストロゲンができるところ、タバコはアロマターゼを阻害することで、抗エストロゲン作用を発揮する。結果、これが癌抑制につながるということです。
タバコの抗癌作用について、もっと全般的な説明としては、タバコにシアン化物が含まれていることです。以前の記事で、ビタミンB17の抗癌作用にはシアンが関係していることを紹介しました。
https://note.com/nakamuraclinic/n/n03d9b51b96ab
また、シアンが細胞内に入ると、細胞内のpHが上昇します。癌細胞の増殖速度はpHの逆関数になります。
https://note.com/nakamuraclinic/n/nda0b3cc4bce5
仮に、タバコに添加された化学物質により癌細胞が生じたとしても、タバコ葉に含まれるシアンがその癌細胞に入り、その細胞内pHを高めることで、癌を休眠状態にする。細胞増殖を起こさせない。また、シアンの分解により生じたチオシアンが抗癌作用を発揮する。そのような機序が想定できます。
しかし実際の臨床現場で、癌患者を前にして、「癌を治すためにはタバコがぜひおすすめです」なんて医者がいれば、みなさんどう思いますか?頭狂ってると思いますよね(笑)
僕はそう思われることが怖くて、躊躇してしまう。本当はそれじゃダメなんだろうけど。

最近、FDAが「タバコに含まれるニコチン量を9割以上引き下げる」と発表しました。
以前の記事で紹介したように、タバコに含まれる健康効果はその大半がニコチンによるものです。ニコチンを含まないタバコは、ほぼ「ただの添加物」のカタマリで、毒物以外の何ものでもありません。
大麻もそうだったように、「本当に体にいいものは人々から徹底的に取り上げられる」などと言えば、僕も立派な陰謀論者の仲間入りということになりそうですね(笑)