ネットでこんな記事を見かけた。
40代女性が語る。
「シーボ(SIBO)ってご存知ですか。普通、腸内細菌といえば、大腸に住む腸内細菌のことをいいますよね。でもシーボというのは、小腸内細菌増殖症(Small Intestinal Bacterial Overgrowth)のことで、小腸に腸内細菌が異常増殖することをいいます。
私はこのSIBOに長年苦しんできました。何を食べてもお腹がもたれて、ガスでお腹がふくれて、便秘だったり下痢だったりで、気持ちがいい排便なんてめったにない。
10年以上前に症状が出始めたとき、まさかこの症状が10年以上も続くなんて、思ってもみなかった。
最初は、家の近くの消化器内科に行きました。リファキシミン(抗生剤)が出て、すぐに治った。でも調子がいいのは5日ほどだけ。また膨満感で苦しくなって、また病院に行くと、また抗生剤が出て、また治るけど、また再発。
ネットの掲示板で、いろんな情報を探しました。
「抗生剤に頼るからダメなんだよ。抗生剤は腸内細菌の皆殺しだよ。善玉菌も悪玉菌も殺してさ。そんなので根本的に治るはずがない」
「そういうときはハーブだよ。先祖代々、大昔から使われてきたものに、間違いはない」
そんな情報を目にしては、腸にいいと言われるハーブを片っ端から試しました。オレガノオイル、ベルベリン、アリシン、、、
確かに、効くものは効きました。2週間ほど調子がいいときがあって、希望がわいたときもあります。でも、せいぜい2週間です。また膨満感が襲ってきて、うんざりする。
栄養の重要性を知って、毎日の食事も改めました。職場の同僚とスイーツを食べに行くのもやめました。
でも結局のところ、治らない。夫に別の食事を作ったり、同僚とも疎遠になり。残ったのは、社会からの疎外感だけでした。
あれやこれやといろいろ試すことに疲れて、失望することにも疲れ果てて、「もういい!好きなものを好きなだけ食べてやる!」と振り切ったことがあります。ちょうど仕事のストレスが一番たまっている時期でもありました。28歳のときです。
すると、いきなり円形脱毛症ができた。髪の毛だけじゃない。眉毛からなにから、全身の毛が抜けて、「これはマジでやばい」と危機感がわきました。
ネットで素人の意見を聞いてるだけでは仕方ないと思って、いわゆる自然療法の治療家をあちこち転々としました。ハーブで治す消化器専門医、さまざまな機能医学ドクター、栄養士、鍼灸師、腸内健康コーチ、、、ざっと15人以上の治療家に診てもらいました。そのうち実際に役立ったのは、せいぜい2,3人です。
それぞれの治療家のもとで、あらゆる治療プロトコルを試しました。エレメンタル食を2度実施し、低FODMAP食もやりました。200種類以上の食品への反応を記録したスプレッドシートも作りました。SIBOの呼気検査もしました(800ドルもかかった)。でも、何をやっても、パッとしない。
結局、私の症状の根本原因は何だったのか。答えから言いましょうか。
甲状腺です。
しかし苛立たしいことに、検査数値は「正常」でした。TSHは2.0~2.5のあいだで変動し、FT4は正常範囲のど真ん中でした。だから、どの医者も「腸の問題だよ」ばかりで、甲状腺の問題であることを見抜けなかった。
しかし、10年以上の歳月と総額12000ドルをかけて探し求めた治療法のゴールは、あるとき、意外なほどあっさり見つかりました。
去年、ある内分泌専門医を受診したとき、TSH、FT4だけではなく、FT3、リバースT3、甲状腺抗体も含む検査をすると、TSHが1.2と低かった(それでも正常範囲内)。T3は正常範囲の下限ぎりぎりの値で、甲状腺抗体は異常高値。
そのときの私の症状は、ひどい頭痛に悩まされ、いつも頭にモヤがかかったようで同僚の名前も思い出せないし、髪の毛は束でごっそり抜けるし、頭をまともに働かせるにはコーヒーを3杯飲まなきゃいけないような状態でした。朝起きて夫の弁当を作ってあげたくても、ベッドから起き上がることもしんどいような疲労困憊ぶりでした。
症状と検査数値から、内分泌科医はこう言いました。
「FT4は正常で、FT3が低い。このパターンは中枢性の甲状腺機能低下症です。T4からT3への変換障害です」
つまり、FT4を作ることはできても、それを活性型のFT3に変換できないことが問題の本質だということです。
さらに医者が「23andMeで遺伝子検査をしてみたら」と提案するので、私は応じました。
案の定、私の遺伝子はDIO2変異体で、特に脳と筋肉でFT4からFT3への変換ができないことが分かりました。橋本病が甲状腺を攻撃していたというのもありますが、それだけではなく、生成された甲状腺ホルモン(FT4)を活性型にして利用できないという、もっと根深い原因が根本にありました。
甲状腺とSIBOがどう関係するのか、と思われるかもしれません。
ダイレクトに関係しています。甲状腺は腸の司令塔です。
甲状腺ホルモンはMMC(Migrating Motor Complex :移動性複合運動体)を直接制御して、小腸から細菌をワイプアウトします。さらに、胃酸分泌、膵酵素分泌、小腸蠕動運動、腸管バリア機能、胆汁流量も制御しています。だから、甲状腺が正常に機能しないと、消化器系全体が鈍化します。食物が滞留し、細菌が異常発酵を起こし、腸管クロム親和性細胞からのセロトニン放出が亢進し、さまざまな症状を引き起こします。
セロトニンといえば、「ハッピーホルモン セロトニン」などというので、体にいいホルモンのようなイメージを持っていませんか?違います。このドクターによれば、「セロトニンはエストロゲンと双璧をなす病気ホルモンだ」とのこと。「セロトニンは万病のもとだよ」というので、私は驚きました。

私は、抗菌薬とかハーブを使って、小腸から悪い菌を追い出すことが治療だと思っていました。しかしそれは的外れです。SIBOが発生するのは「有害な」細菌が小腸にいるから、ではありません。体内で適切な細菌分布を維持できないことが病態の本質です。腸内細菌分布の司令塔は甲状腺なのだから、甲状腺へのアプローチが根本的な治療になります。
ここで重要なのは、チラージンではダメだということです。普通、多くの人にとって、甲状腺ホルモンといえばチラージン(T4製剤)です。しかし私は遺伝的にT4をT3に変換できないのだから、T3を補う必要があります。
それで、チロラミン(T3製剤)を開始しました。2.5㎍から始めて、2カ月かけて3回の増量を行い、今は5㎍を1日2回飲んでいます。変換のサポートのため、セレン、亜鉛、チロシンを追加しました。
効果は劇的でした。毎朝、起床時の「二日酔い」のような不快感が消えました。コーヒーを下剤代わりに飲んでいたのが、自然な排便がある。腹部の膨満感が軽減し、ブレインフォッグもずいぶんマシになった。主人と休日遊びに行くエネルギーがわいてきました。
6週間ほど経って、膨満感は完全に消えました。まだ生理の前後には調子の悪いときはあるけど、8週目にSIBO検査をすると、水素濃度は12ppm。初めて陰性の結果が出ました。SIBOが治ったということです。
これまで良かれと思ってやってきた制限食は、実際のところ、甲状腺を悪化させていました。たとえば、糖質制限。炭水化物はT4からT3の変換に不可欠で、私がやっていた制限食は、低下した甲状腺機能をさらに痛めつけるだけのことでした。
私は、小腸に潜む細菌を悪の根源として敵視してきました。しかしそれは、単なる日和見主義者にすぎません。システムが修復されれば、細菌は自然と適切な場所におさまります。
消化酵素と消化促進のハーブ(ショウガ、アーティチョーク)は今も続けていますが、食事制限は特にしていなくて、普通の食事をしています。パスタもパンも当たり前に食べているし、低FODMAP食もやめました。それでも、SIBOの呼気検査は陰性のままです。
10年以上にわたる闘病経験を通じて私がみんなに伝えたいのは、解決のきっかけは、案外「正常」な検査値にあるということです。「正常範囲内におさまっているから大丈夫」は落とし穴かもしれませんよ。私はこの落とし穴にはまって、10年以上苦しむことになりました。みなさんもどうかお気をつけて」
僕は極力、一般的な処方薬の類は使いたくないほうですが、10年以上自然療法に助けを求めながら改善を得られず、症状に苦しめられたということなら、また、遺伝的にどうしても自然療法での改善が難しいということなら、薬を使うことは全然否定しません。
というか、治療家の僕のほうが「絶対に薬は使わないぞ!」という思い込みのあまり、T3製剤の処方であっさり解決するところ、患者に不必要な苦しみを与えてしまう可能性を示唆しているように思います。
そういう意味で、この女性の話は僕にとって大変教訓的です。
【参考】
https://www.reddit.com/r/SIBO/comments/1otxsul/my_sibo_wasnt_actually_sibo_it_was_my_thyroid_the/