なぜ癌になるのか?
たとえば、オットー・ワールブルグは「低酸素が癌の誘因」になることを証明しました。

あるいは、山極勝三郎はウサギの耳にコールタールを塗擦することで人工癌の作成に成功しました。

当時、癌の発生原因は不明であり、諸説乱立(外傷説、遺伝説など)していましたが、山極のこの発見(人工癌の作成)は学会に衝撃を与えました。ノーベル賞にも推挙されたものの、受賞に至ることはありませんでした。そこには人種的な差別もありました(ノーベル賞選考委員の一人「東洋人にノーベル賞は早すぎる」)。しかしもっと根本的な理由があります。
現代医学は石油抜きに成り立ちません。石油由来のベンゼン環に化学的修飾を加えることで様々な医薬品が作られます。モロに石油由来のコールタールにより癌ができるとなっては、「これからバンバン薬を作っていこう!」と息巻いている勢力にとって、不都合極まりない。「ワセリンは無害だから赤ちゃんにも塗っていいよ」なんて言っている医者の立つ瀬がありません。
あるいは、バリー・マーシャルは「胃潰瘍および胃癌はピロリ菌によって起こる」という、『癌細菌説』を唱えました。この説は当初、学会から異端視されましたが、自身がピロリ菌を飲み、その数日後に胃潰瘍が発生し、抗菌薬を飲むことでその胃潰瘍が治癒するという、自分を実験台に使った検証を公表することで、2005年にノーベル賞を受賞しました。

しかし、ノーベル賞受賞後のマーシャルの活動はあまり知られていません。抗生剤によりピロリ除菌すれば確かに胃癌は減少するが、食道癌が増加することに気付いたマーシャルは、安易なピロリ除菌に警鐘を鳴らしました。しかしピロリ除菌に商機を見出した製薬利権がガッツリ食い込んだ後では、当の提唱者本人の声も届きませんでした。
とにかく、「(少なくとも一部の)癌は細菌感染により発症する」ことを証明したことは、マーシャルの功績と言えます。
他にも、「癌はウイルスにより発症する」という主張があります。

1910年ペイトン・ラウスはこんな実験をしました。鶏に自然発生した癌を取り出し、それをすり潰し、磁器フィルター(0.1~0.5μmの径で、細菌は通らないがウイルスは通過する)で濾過しました。この濾液を健康な鶏に注射したところ、癌を発症した。
つまり、生きた癌細胞を移植したわけでもなく、細菌が癌を引き起こしたわけでもない。「何らかの目に見えない感染性因子が癌を引き起こした」とラウスは考え、これを濾過性因子(filtrable agent)と呼びました。
この濾過性因子は、後にウイルスと判明し、このウイルスはラウス肉腫ウイルス(RSV)と命名され、ラウスは1966年ノーベル賞を受賞しました。研究の発表から56年後の受賞は異例の遅さで、ギネスブック記録にもなっています。受賞時、ラウスは87歳でした。
この研究の意味するところは大きくて、たとえば、「癌は移り得る(transmissible)」ことが証明されたとも言えます(感染症としての癌)。
後に、HPV(子宮頸癌)、HBV/HCV(肝臓癌)、EBV(上咽頭癌)、HTLV-1(成人T細胞性白血病)など、発癌ウイルスが次々と発見されました。B型肝炎ウイルス、子宮頸癌ウイルス、いずれのウイルスも、ワクチンを売り込むための宣伝材料になっていますね。
つまり、癌は細菌によって起こり得るし、ウイルスによっても起こり得る。しかし同じような主張でも、「癌はカビにより発症する」と唱えた医者は、医師免許剥奪のうえに裁判で有罪判決を受け、不遇の晩年を過ごしました。製薬会社にとってうま味ゼロの学説だったということでしょう。

とにかく、癌の原因について、低酸素、化学物質(コールタールなどの石油由来製品)、病原体(細菌、ウイルス、真菌)、放射線など、諸説さまざまあるわけです。
どれが真実なのか?僕は研究者ではないので分かりません。というか、そこにはあまり興味がありません。どの研究にも一抹の真理が含まれているのでしょう。僕は臨床医なので、患者の治療に役立つ理論にこそ魅力を感じます。理論がどうであれ、その理論から導き出される治療法が「手術、抗癌剤、放射線」とお決まりのパターンでは、話になりません。
そういう意味で言うと、バージニア・リビングストンの説は大変魅力的です。

1947年、リビングストンがある病院で勤務していたときのこと。ある看護学生が「先生、ちょっと私の症状、診てもらえませんか」という。診察すると、指尖潰瘍、皮膚硬化、鼻中隔穿孔が見られた。「指先とか感覚がなくて、熱いとか冷たいとか分かりません」この看護学生は主治医から強皮症の診断を受けていたが、当時らい病(ハンセン病)の患者を多数見ていたリビングストンにとって、学生の症状はらい病によく似ていた。しかし確かに、らい病ではなかった。好奇心から、学生の鼻中隔と指先の病変部からスメア(細胞)をとり、チールニールセン染色(抗酸菌(結核菌、らい菌)の特定が可能)をしたところ、赤く染まった(抗酸菌陽性)。しかし顕微鏡像は、らい菌でも結核菌でもない。他の複数の患者で同様の菌を確認したことから、リビングストンはこの菌を仮にsclerobacillusと呼び、これが膠原病(強皮症やSLEなど)の原因菌ではないかと推測した。さらに、この抗酸菌を実験動物に注射したところ、なんと、ほとんどの個体が癌を発症した。動物から採取した癌組織は抗酸菌陽性を示した。(膠原病は癌の別の表現形態)。
これに驚いたリビングストンは、癌患者の外科医から数多くの癌組織を入手し、それらをチールニールセン染色すると、ことごとくすべてのスライドで抗酸菌陽性が見られた。さらに、それら癌組織から採取した病原体を実験動物に注射すると、多くの個体が癌を発症した。コンタミ(異物の混入)はない。清潔かつ精度の高い技術で、数えきれないほどの観察を繰り返した結果、リビングストンはひとつの確信に至った。「癌はこの病原体によって引き起こされるのだ」と。
癌が病原体によって起こるという説は、リビングストンが初めて言い出したことではない。すでにフランスのDoyen、イタリアのMoriら、複数の研究者が提唱していたが、この病原体が抗酸菌陽性を示すことは知られていなかったし、さらに、癌組織から採取、培養した病原体を動物に注射すると癌を発症することも知られていなかった。また、この病原体が試験管内でヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を産生することもリビングストンの発見だった。
リビングストンは論文を書き、自身の発見を医学誌に報告した。報告のなかで、リビングストンはこの病原体をProgenitor Cryptocidesと命名した。
(参考「The Conquest of Cancer」 Virginia Livingston著)

お察しのとおり、主流派の医学界はリビングストンの発見を無視しました。だから、彼女が同定したProgenitor Cryptocidesという病原体も医学的に認められていません。しかし彼女は、正確な技術で何度も「コッホの原則」が成り立つことを確認しました。
たとえば結核菌がプレオモルフィズム(多形性)を示すことは、一般的な医学でも認められています。プレオモルフィズムというのは、病原体が周囲の環境次第で様々な形態(桿菌、球菌、糸状体、休眠状態(L-formなど))をとることです。リビングストンが癌患者から発見したP. Cryptocidesも、結核菌同様、多形性をとります。
体内にいる微生物が多形性をとることについては、以前の記事で書きました。

リビングストンは多くの癌患者を治癒に導きました。彼女が最も重視したのは、免疫です。体内にP. Cryptocidesがいたとしても、免疫系が適切に機能していれば、この菌は細胞内に隠れて延々休眠状態で、何ら悪さをしません。免疫系が弱ったときに、この菌は暴れ始めます。ファストフード、コンビニの総菜などの貧相な食事、病原体に汚染された食材、重金属、添加物や農薬、医薬品などの毒物の摂取により、免疫系がその処理に疲弊するときが、ピンチです。リビングストンは「癌は免疫欠乏性疾患である」とも言っています。
たとえば、リビングストンは癌患者に対して、鶏肉の摂取を厳禁しました。すでに20世紀初頭、上記のペイトン・ラウスが「ニューヨーク市に流通する鶏肉の9割が癌を保有している(RSV陽性)」ことを証明し、市当局に警鐘を鳴らしていました。100年前でそうなのだから、現代の鶏肉がどんな状況か、察するに余りあります。
「癌は感染する」というのがリビングストンの考えです。ラウス肉腫陽性の鶏肉を食べ続ければ、癌がうつります。「ヒトの癌の40%は鶏肉由来である」(Elizabeth McCulloch)という研究者もいるほどです。もちろん、経口摂取だから、ある程度胃酸で防御されたり、腸管免疫による防御があるので、注射で体内に直接注入するほどダイレクトに因果関係は見えないだろうけど、健康な人はともかく、すでに癌を発症してる人は鶏肉厳禁ということです。
さらに、栄養素の重要性はもちろんですが、おもしろいと思ったのは、特にビタミンAとアブシシン酸(いずれもβカロテンから産生)の重要性を強調していることです。ビタミンAは化学物質による発癌を防御します。急性前骨髄性白血病にレチノイン酸(活性型ビタミンA)が有効であることは血液内科医なら誰でも知っていることですが、ビタミンAが有効なのは血液癌に限りません。アブシシン酸はhCGの作用(免疫抑制、血管新生、細胞増殖)を抑制します。アブシシン酸は植物の種に多く含まれています。以前の記事でアミグダリン(バラ科植物の種に多く含有)について触れましたが、ここにもアブシシン酸が関係しているのかもしれない。
リビングストンの主張は、僕にとっておおむね納得できるものばかりだけど、ちょっとどうかな、と思う点もないわけではありません。それは、BCGワクチンと抗生剤の推奨です。「結核と癌は両立しない」ことは昔から言われていて、結核患者は癌にかからないし、癌患者は結核にかからない。まさに、この着眼から生まれたのが丸山ワクチンで、リビングストンも抗P.cryptocides抗体を生み出すワクチンを患者に使っていました。つまり、抗癌ワクチンです。
小児8万人を対象とした疫学研究で、BCGワクチンを打った小児はそうでない小児に比べて、たとえばリンパ腫の発生率が10分の1以下だった。最近では、2020年に日本でコロナが全然流行しなかったのは、BCGワクチンの効果によるもの、とする研究もある。
「意味のあるワクチンは1本もない」というのが僕の基本スタンスだけど、BCGワクチンについては、質のいいちゃんとしたものなら、例外とすべきか。。悩ましいところです。