こんなメッセージが届いた。
「こんにちは、かなり初期から中村先生の情報発信を拝見している42歳男性です。以前5歳の子供のことで受診し、親身の助言をいただいたことがあります。今回私の悩みについてご相談出来ればと思い連絡させていただきました。10年前に一度円形脱毛症になり、ほぼ無毛となりました。いくつか皮膚科を受診しましたが「原因は分かりません。『あきらめる』というのもひとつの生き方です」などと言われました。しかし2年ほど経って、なぜか髪が復活し、ほっとしておりました。しかしまた最近になって、一部五百円玉大の円形脱毛が前頭部あたりに2個できました。風呂に入る度に毛が抜けて、ショックを受けます。先生の勧めているフルボ酸なども試しておりますが、油症の髪が災いしているのか、効果を感じません。何か良いお考えがあれば記事にしていただけると有り難く思います」
普通、このようなメッセージでの健康相談は受け付けません。「うちは病院なので直接ご来院ください」という感じです。僕が特に冷淡というわけではなくて、当たり前ですよね?
しかし髪の毛のことで悩む男性諸君は多いかと思います。僕も含めて。「皆さんにとって有益な健康情報を発信したい」というのが僕のモットーなので、例外的に上記の相談についてお答えします。
皮膚科受診した際、言われた言葉。「あきらめるというのも一つの生き方です」
これは卓見です。相談者さんは不快に思われたかもしれませんが、この皮膚科医の言葉は真理を突いていると思います。
あきらめない男性がどれほど多くいることか。また、そのせいでどれほど多くの不幸が起きていることか。
薄毛専門のクリニックでバイトしていたことがあると昔の記事に書きましたが、このバイトを通じて、いわゆる薄毛治療薬の副作用を数多く見ました。フィナステリドによる勃起不全や抑うつ、乳房肥大、あるいはミノキシジルによる動悸や頭痛、めまいなど、多くの患者は薬をやめれば回復しましたが、これらは短期的な副作用に過ぎません。幸いにも目立った副作用が出なかった人が、長期に服用した場合、何か重篤な副作用が起こらないか。たとえばある種の癌の発生率が上がる可能性はないか。
あくまで個人的な経験ですが、フィナステリドを長期に服用した人の悪性リンパ腫を診たことがあります。もちろん、因果関係は不明です。添加物や農薬などの毒物があふれるこの時代ですから、癌を発症するリスク因子は無数にあります。フィナステリドが原因とは言いません。
しかし、僕としては、薬で症状を抑え込むような治療はしたくありません。それが僕の基本スタンスです。特に、薄毛については、身体的苦痛というよりは審美的な悩みですから、これは本来、体よりは心の問題です。
老荘思想が尊ばれた古代、老いることは現代よりもはるかにポジティブに受け取られていました。でないと「老子」なんて自ら名乗る人は出てきません。そんな世の中では、顔にしわが増えたり、髪が白くなったり禿げたり、ということは、人間としての成熟の証であって、誰もしわ取りクリームを塗ったりカツラをかぶったり、なんてする必要はなかった。むしろ、人々は老いの兆候を喜んだ。「これで俺も若造扱いされなくて済む」と。
でも残念ながらというか、現代はルッキズムの時代です。「若さ」は価値であり、「老い」は害虫のように忌避すべきものとなっている。
何もこんな世間の風潮に迎合することはない。実際、みなさんご存知のように、薄毛であることをむしろ堂々と売りにして、活躍している俳優やタレントもたくさんいます。
と言いながらも、僕もこの現代を生きるひとりですから、上記相談者氏の気持ちは分かります。
薄毛が進行すれば、僕は薬は飲みませんが、それ以外の方法で、ひとまずやれることはやると思います。ただし、カツラをかぶる的なことはせず、できるところまで抵抗して、それでダメならあきらめます(笑)
相談者氏に対しても、薬による薄毛治療は勧めない。ただ、薬ではなく、栄養素やハーブなど、もっと負担のない形での薄毛治療ということなら、いくつかアドバイスできます。
以前の記事で、フルボ酸やアガリクスについて書きましたが、すでに試したうえで、効果がなかったから、相談者氏は僕に連絡してきたのでしょう。
しかし、気になるのは、相談者氏の毛の抜け方です。
「10年前に一度円形脱毛になり、それが全体に広がって無毛となった」とのことですが、これはAGA(男性型脱毛症)の経過ではありません。これは明らかに、原因のある脱毛です。
たとえば、抗癌剤で脱毛が起こることは有名ですが、コロナワクチンで脱毛が起こることも以前の記事で紹介しました。
https://note.com/nakamuraclinic/n/nb2bb14bdc401
以下の事例はすべて、学術論文での報告です。




上記相談者氏は、僕の記事の古くからの読者ということですから、ワクチンは打っておられないでしょうし、抗癌剤治療中というわけでもないでしょうから、別の要因が考えられます。
たとえば、鉛、ヒ素、水銀などの重金属への慢性曝露によって脱毛が起こります。お住まいの地域が鉛の水道管を使っていることはないですか。
あるいは、有機溶剤や農薬に曝露することでも脱毛します。仕事柄、有機溶媒をよく使うとか、近所に畑があって農薬を大量に散布しているとか、ないですか。
あるいは、カビ毒によっても脱毛します。アフラトキシンとかオクラトキシンとか、毛母細胞に毒性があります。じめじめ湿った古い木造住宅に住んでいて、慢性的にカビにさらされている可能性はありませんか。だとすればEM菌をシュッシュするといいですよ。
そんな具合に、僕としては、何らかの環境毒を疑います。このあたりは、直接の来院ではなく、メールでの相談なので、本人にそれぞれの環境毒につきその有無を確認することはできませんが、ご自身の生活環境をもう一度振り返ってみてください。
あと、円形脱毛症ということなら、玉ねぎを試してみてはどうでしょうか。
昔から民間療法的に、「玉ねぎがハゲに効く」と言われていました。その真偽を科学的に試してみたのが、以下の論文です。

玉ねぎをせっせとすりつぶして、それを頭に塗る。それを辛抱強く、6週間続けたところ、なんと、86.9%の症例で円形脱毛症に改善が認められた。
すりつぶすのが面倒ということなら、毎日玉ねぎのスライスサラダをたくさん食べる、というのでもいいと思います。直接塗布するほどの効果はないだろうけど、ゆっくりじわじわと効くと思います。
しかし玉ねぎで発毛するとして、このアプローチは対処療法的です。脱毛の根本原因が毒物であれば、第一にやるべきことは毒の除去です。