45歳女性
2024年5月14日初診。
「ピアノ教室の先生をしているのですが、うつっぽくて、仕事をする気になれません。あと、腕がむくんでて、張ったり、しびれたりする感じがあります。まずは仕事よりも、自分の体とメンタルを治すのが先かなと思って、ここに来ました。
あと、ここ1年で体重がすごく増えました。やたらのどが渇いて、頻尿で、妙に体がだるい。更年期かなって思ってたんだけど、夫が「糖尿病じゃないのか」って。
若いときから体温調節が下手です。たとえば、今日ここ来る前もそうだったけど、20分ほど寒気がして、次に10分ほど熱くなって、また寒くなって、みたいな。そういうのが30代後半からありました。
気候的には温かくなってきたけど、ダウンジャケットを着たり脱いだりして、それで体もぐったりします。
ホルモンがおかしいのかと思って、エクオールを飲んだりしたけど、効果がなくてやめました。
甘いものが好きで、やめなきゃって思ってるけど、ついケーキとか食べちゃいます。
睡眠は寝つきが悪くて、でも寝ないと翌日が仕事にならないので、最近睡眠薬を飲み始めました。それでも、途中覚醒して2回ほどトイレに行きます」
まずは食生活の改善です。
本人も自覚しているとおり、甘いものは控えめにしたい。どうしても食べたいなら、せめて白砂糖を含むものはやめて、黒砂糖とか蜂蜜にしましょう。
あと、症状的に間違いなくMg不足があるから、塩分をしっかりとる。できれば塩化ナトリウムみたいなケミカルな塩ではなく、ちょっとお高めの、いい塩を使う。というか、塩だけじゃなくて、味噌も醤油も、調味料はいいものを使いましょう。お米炊くときににがりを入れたり、味噌汁とかの汁ものを炊くときにはにがりを入れたり。あとお風呂にも塩化Mgをたっぷり入れて、風呂上りにはMgクリームを塗って。とにかくMgはしつこいぐらいにしっかりと補う。なんなら、朝と夕方に、小さじ1杯の塩を入れた水を飲む。それぐらいしてもいいからね。
2025年1月24日再診
「気持ち的にはずいぶん落ち着きました。仕事に行くことは、以前ほど苦じゃなくなりました。
睡眠薬をやめれたました。でも、寝れたり寝れなかったりで安定しません。
今困ってることは、以前も言ったけど、寒気とホットフラッシュです。
寒い時期ではありますが、風邪ひいたみたいにぞくぞく悪寒がすることもあれば、逆に、ホットフラッシュなのか、だらだらと汗をかいたり。
昔、不妊治療をしていたことがあります。ホルモンの乱れがあるということで、ホルモン注射をしていました。あと、そのときに医者から、甲状腺機能低下症だと指摘されました」
だいたい女性の不調の背後には、エストロゲン過剰があることが多いものです。「若い女性ならPMS、中高年なら更年期障害、あるいは、乳癌、卵巣癌、子宮癌などの婦人科系の癌を見れば、エストロゲン過剰を疑う」というのが、アメリカの生理学者Ray Peatの教えです。
女性の生理周期を28日として、

前半2週間はエストロゲンの血中濃度が徐々に増えていき、14日目に排卵があって、エストロゲンはそれ以降ピークアウト。後半2週間はプロゲステロンの血中濃度が増えていき、それがピークアウトして、次の生理が起こる。
つまり、生理周期の前半はエストロゲン優勢、後半はプロゲステロン優勢、これが健康な女性の生理リズムです。
しかし、現代は農薬、添加物などの毒物に満ちていて、これらの毒物の多くがエストロゲン様作用を持っています。だから、現代を生きる女性は、エストロゲン過多に陥りがちです。
エストロゲンに拮抗するのがプロゲステロンなので、プロゲステロンを補うことを考えて、

プロゲステロンクリームの塗布を勧めた。
生理のある女性は、生理周期の後半、だいたい生理周期10日目から塗り始めて、次の生理が始まれば塗るのをやめる。1プッシュをおなかとかわきの下とか、皮膚の柔らかいところに塗ってください。
閉経後女性は、3週間塗って1週間休む。そういうリズムで塗る。
このクリームはヤム芋から抽出した天然ものだからいい。病院で処方されるような合成のプロゲスチンはダメだよ。
あと、プレグネノロンの服用も併せて勧めたい。

プレグネノロンは、いわばマスターホルモンで、これを起点にさまざまなホルモンが作られます。

コレステロールは命の源であり、スタチンの服用で断じて下げてはいけないことは以前の記事で何度も書いてきましたが、上図を見れば分かるように、プレグネノロンは「ほぼコレステロール」です。
これを補うことで、女性特有のさまざまな不調が改善します。
2025年7月25日再診
「プロゲステロンクリームを塗ってすぐに、長らく止まっていた生理が来ました。しかも、いつもならメンタル不安定になるところ、全然そんなことなくて、落ち着いていました。
先生には言ってなかったけど、私、不安定なときはいつも泣いていました。「自分はなんてダメな人間なんだろう」とか「役立たずだ」とか思って。そういうふうに自己卑下するのが自分の性格なんだと思っていました。
でも、最近そういうことがありません。こんなにポジティブな気持ちで生きていられるのは、自分の人生で初めてのことかもしれません」
恐らくこの女性は、甲状腺機能低下症がありますが、今回僕は、そこに対して直接的なアプローチはしませんでした。ただ、プロゲステロンとプレグネノロンを勧めた。実はそれだけで、甲状腺機能も整います。
コルチゾールの過剰によって甲状腺機能が抑制されるところ、両ホルモンは甲状腺に対して保護的に働きます。
特にプロゲステロンは、甲状腺ホルモンの核内受容体(T3受容体)の働きをサポートします。
また、エストロゲン過剰では、甲状腺ホルモンが血中で結合タンパクにつかまりやすくなり、「見かけ上の甲状腺機能低下」になります。プロゲステロンは、エストロゲンに拮抗することで、甲状腺ホルモンをバランスします。
プレグネノロンは、若い人に投与しても効果は見えにくいですが、40歳以上の人(体内でのプレグネノロン産生が低下する年齢)に投与すると、さまざまなメリットがあります。人間を使った実験で、記憶力の向上、仕事のパフォーマンス向上、抗疲労効果、精神安定といった効果が確認されています。
また、この実験に参加者のなかに、「顔が引き締まった」と報告した人が多数います。皮膚への血液循環がよくなったためだと考えられます。

左の写真は、1983年7月のレイ・ピート先生です。このとき47歳ですが、ピート先生は、内心、年の割に老けて見える顔を恥じていました。実際、目の下のたるんだ涙袋、深いほうれい線、口角下のたるみ(マリオネットライン)が、まるで老人のようだと自分でも思っていました。そこで、自ら人体実験のつもりで、プレグネノロンを飲むことにした。1年間飲み続けた結果が、右、1984年9月の写真です。目元がきりっと引き締まり、ほうれい線が消え、マリオネットラインも目立たなくなった。皮膚はピンと張って、周囲はその若返りぶりに驚きました。

レイ・ピートの手法で若返った人は数えきれない。さまざまな体調不良が改善したうえに、見た目が10歳も20歳も若返るのだから、患者は大いに喜びました。

最近、橋本環奈の影響か、美容整形で目の下に涙袋を作る女性が増えてるのだとか。こういうのって、若いときはいいかもしれないけど、年取ったら悲惨なことになる。目がたるんで、長門裕之になるよ。

老いは病気ではない。だから、加齢に伴って刻まれる顔の年輪は、決して治療対象ではないけれども、長門さんもプレグネノロンを服用すれば、目元がもっとすっきりしたと思う。
年をとれば、「治したい」と思う老いの特徴を、若い女性が金を払ってわざわざ作ってるんだから、まったく、人生は「ないものねだり」だよね。

美容外科医の高須先生が、「アヒル口や涙袋を作る手術はしない。僕はそれを美しいと思わないから」と言ってて、高須先生のことをちょっと見直した。フリーメイソンに入るような酔狂な成金だと思っていたので。金の亡者ではなく、意外に、ちゃんとした「自分にとっての美しさ」がある人なんだ。そういう芯があるからこそ、一代で高須帝国を築き上げたんだろう。