
メルビン・ナイズリーというアメリカの生理学者がいました。赤血球や白血球が毛細血管内で凝集し、組織の虚血を引き起こすことを初めて報告した人で、2回もノーベル賞候補になったことがある。
ノーベル賞にノミネートされるということは、それぐらい画期的な研究をしたすごい人ということだけど、この人の研究は現在では完全に忘れられています。

マラリアという病気がある。マラリア原虫を持った蚊に刺されると、発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状が出て、ひどいと意識障害や腎不全なども起こる。
ナイズリー博士は、実験的にマラリアに罹患させたサルを研究することで、マラリアは血流不全病であると、マラリアの本質を喝破しました。
マラリアにかかったサルの血管、たとえば、下大静脈を取り出し、分断面を見ると、下3分の1はマラリアの感染した血球(赤血球、白血球など)の凝集物がベッタリへばりついている。真ん中3分の1は連銭形成したドロドロの血液がゆっくりと流れ、上3分の1は血球成分を含まない血漿がさらさらと流れている。
つまり、マラリア患者では、赤血球や白血球がろくに機能していない。血管の内壁にプラークのようにへばりついているので、赤血球は酸素や栄養素を組織に運べず、白血球は免疫機能を発揮できない。
また、この研究により、なぜマラリアは再発を繰り返すのか、その理由も明らかになりました。いったん解熱しても、血管内にプラーク状に潜むマラリア感染済み赤血球や白血球がまた循環系に戻れば、マラリアの症状が再発することになる。
実際のところ、解熱と発熱を繰り返す感染性疾患、たとえばライム病でも、同じような現象が起こっていると考えられます。というか、インフルエンザやコロナ、普通の風邪でも、程度の差はあれ、本質的には同じです。実際、症状だけを見れば(発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛)、マラリアもインフルエンザも区別がつきません。
さらに、ナイズリー博士は、サルの目の血管を観察することで、全身の血液のドロドロ具合が分かることを発見しました。実際、目の血管と大血管の血液粘性度合いはよく相関します。
ナイズリー博士はこの発見を人間にも応用しました。

目の血管を外界から観察する顕微鏡(the sclerascope)を独自に作成し、多くの患者を診察しました。この経験から、ナイズリー博士はひとつの結論に至りました。「血液粘度の高まりは、ほぼすべての病気に共通する特徴である」と。
また、血液のドロドロ具合と疾患の重症度が相関することにも気づきました。ドロドロが強いほど疾患は重篤であり、さらさらであれば健康ということで、ここからひとつの評価尺度を作りました。

ナイズリー博士は、キニーネやハイドロキシクロロキンの投与により、ドロドロ血液がさらさらになることを観察した。ここから、「マラリアがキニーネで治るのは、キニーネによる抗原虫作用ではなく、血流改善効果によるものだ」と気付いた。
では、なぜ血液粘度が上がるのか?
実は、赤血球の表面は本来マイナス荷電を帯びている。

健常者の血管内では、そんなふうに負荷電を持つ赤血球同士がお互いぶつかりあって反発したり、赤血球が血管内壁にバウンドしている。そのおかげで、血管の拡張が促され、血の巡りがよくなるわけです。この赤血球が持つ負電荷のことを、ゼータ・ポテンシャル(ゼータ電位)といいます。
ここに、正に帯電した物質(カチオン)が流入するとどうなるか。
赤血球の負電荷が中和されて、赤血球同士の反発が弱まり、お互いに近づきやすくなります。この傾向が過ぎれば、連銭(ルーロー)を形成し、血液粘度が上がり、末梢に血が流れにくくなる。

さらに、健常者では血管内皮もマイナス電荷を帯びているのですが、赤血球の負電荷が弱まると、赤血球と血管内皮が近づきやすくなり、血管の摩擦や損傷が増えます。また、プラス荷電の物質が多い状況では、フィブリノゲンなどの架橋が進みやすくなり、血栓形成のリスクが高まります。
血液粘度の上昇(ドロドロの血液)こそが万病の背景にあるとすると、万病に効く健康法は、血液粘度を下げる、つまり、赤血球のゼータポテンシャルを高める方法でもあるはずです。

たとえば、コロナワクチンを打った人では体内でスパイクタンパク(SP)が産生されるけど、SPはプラス荷電を帯びているので、ゼータポテンシャルが下がります。
病原微生物はプラス荷電を帯びているので感染症に罹患するとゼータポテンシャルが下がりますが、不思議なもので、病原微生物が無毒化するとマイナス荷電になって、赤血球に影響を及ぼしません。
糖尿病の場合、グルコースは電気的に中性ですが、高血糖環境だとミトコンドリアで大量の活性酸素が発生して、血管内皮が障害され、その結果赤血球のゼータポテンシャルが下がります。また、高血糖のために血漿浸透圧が上がって、血液粘度が上がることもゼータポテンシャル低下につながります。
ワクチンにはゼータポテンシャルを下げる物質がさまざまに含まれていて、それがワクチン接種後のさまざまな異常を引き起こしますが、最悪なのはアルミです。アルミはAl3+、つまり3価のカチオンで、もろにプラス荷電を持っているので、ゼータポテンシャルを大幅に低下させます。
ワクチンを打った子供が接種後に突然死(SIDS)するのは、ゼータポテンシャルの低下により脳の呼吸中枢への血流が途絶することによります。
貧血もそう。鉄欠乏性貧血のような、鉄さえ入れれば改善する貧血はともかく、難治性の貧血の背後には赤血球のゼータポテンシャル低下があります。上図のように連銭(赤血球凝集)があって血液ドロドロの人が採血を受けるとき、注射針はこのどでかいカタマリを吸引せず、赤血球をほとんど含まないさらさらの血漿部分を吸収するから、見かけ上、ひどい貧血だったりする。解決策は、鉄剤の投与では決してなく、ゼータポテンシャルの改善です。赤血球が健全なマイナス電位を取り戻し、連銭が解消されれば、数値は改善します。
その他、頭痛、筋肉痛、関節痛。すべて、赤血球のゼータポテンシャル低下によって説明がつくし、逆に、ゼータポテンシャルが改善すれば、症状も自然と治っていくはずです。
ゼータポテンシャルを乱す分子、あるいは安定させる分子を並べると、以下のようになる。

アルミの毒性は最悪です。カルシウムも不必要に摂るべきではない。
逆に、クエン酸が体にいい理由が「ゼータポテンシャルを安定させるから」ということもわかる。
硫酸イオン(SO4 2-)、要するに硫黄分について、僕は今臨床でDMSO(ジメチルサルフオキシド)をよく使っています。抗炎症作用があるのだけど、特に鎮痛作用がかなり強いので、副作用のない痛み止めとして、癌患者によく勧めます。癌患者ではゼータポテンシャルが低下していることが多いので、そういう意味でもDMSOは助けになるだろう。
https://isom-japan.org/article/article_page?uid=irPER1731015898
さらに、患者でよく「ビタミンDが体にいいってことだからDサプリを飲んでます」みたいな人が多いけど、まぁ否定はしないけど、感心しない。できれば日光に直接あたったほうがいい。特に今みたいに日光が豊富な時期は。
これはなぜかというと、日光にあたることで、皮膚でビタミンD以外にも、硫化物が合成されるからです。Dサプリにはこういう「おまけ」がありません。
ただし、ゼータポテンシャルが高ければ高いほどいいかというと、決してそうではありません。それは、血液がいつもさらさらでは困るからです。ときには、赤血球が凝集してしっかり固まってくれないといけない。ヘパリンはゼータポテンシャルを高めます。しかし、薬で強制的にさらさらにするような高め方では、出血したときに困ってしまう。

だから、赤血球のゼータポテンシャルは-15 mvくらいがちょうどいい。
これぐらいが、ちょうど赤血球凝固の閾値で、さらさらでありながら、かつ、出血にも対応できる、絶妙の数字ということです。
結局のところ、僕が臨床でよく使うサプリは、ほとんどがゼータポテンシャルを回復させるものです。ゲルマニウム、フルボ酸、アガリクス、プロポリス、チャーガ、ヨウ素、クエン酸、DMSOなどのサプリはもちろん、日光浴やアーシング、塩分摂取、運動の励行も、結局はゼータポテンシャルの改善に寄与します。
このゼータポテンシャルの概念は、個々ばらばらにある民間療法について、それがなぜ効くのか、統一的に説明する理論を与えてくれます。たとえば、多分だけど、ヨモギ、ドクダミ、イタドリとかの薬草は、飲むことで赤血球のゼータポテンシャルが改善しているはずだし、逆に、ゼータポテンシャルを損ねるような食事なり生活習慣は体に悪いはずです。
病気とは何か?あるいは健康とは何か?ゼータポテンシャルの概念は、そのような問いにひとつの答えを提示する一大理論であり、提唱者のナイズリー博士がノーベル賞候補に挙げられたのも納得です。
すべての医学生が学ぶべき大理論ですが、こういう理論に限って闇から闇に葬られるのが、今の医学界です。
【参考】
https://substack.com/home/post/p-143121968