東京観光にて
夏休みのせいか外国人観光客が多すぎるせいか、いつも行く品川のホテルがとれなかったので、今回は豊洲に泊まった。
豊洲といえば豊洲市場である。海鮮丼なり寿司なりを食べようということで、朝食をどこで食べようかと店を探したが、人気店は長蛇の行列。
行列に並ぶのが嫌いなので、「どこでもいいからすいてるところに」と思って、適当な店に入った。
適当に入った店だけれども、全然うまかった。値段も驚くような額だったけれど(笑)
店内には有名人のご来店写真がズラリと並んでいた。ジェフ・ベゾスの写真まであったのには感嘆した。「ジェフ・ベゾスもこの寿司を食ったのか」と思うと、べらぼうな食事代も多少報われるような気がした(笑)

「見れるうちにパンダを見ておこう」ということで、上野動物園に行った。
行列に並んだ末に現れたパンダは、岩場の奥で顔を向こうに向けていて、ボロ雑巾のようにぐったり眠っている。ひょっとしたらパンダではなく、本当に巨大なボロ雑巾だったかもしれない(笑)

動物園の近くには、国立科学博物館もあれば美術館もたくさんある。上野に住めば、気が向いたときにふらっと美術館や博物館に行けるのだから、こんな贅沢なことはない。文化レベルの高さを感じました。


ここ数年、SNSでフラットアース(地球平面説)をしばしば目にする。
「テレビやメディア、既存の学会の言うことは嘘ばかり」という文脈で、「ワクチンは毒物でしかない。絶対打っちゃダメ」
「コロナウイルスは存在しない。そもそもウイルス自体存在しない」
「地球温暖化説は嘘。実際のところ、地球は寒冷化に向かっている」
「地球は球体ではなく、実際には平面である」
という具合に、SNSを通じて覚醒した人々に提示される「真実」のひとつとして、フラットアースが語られる。
メディアがしばしば嘘を言うとかワクチンの危険性については同意するけれども、いくつか異論がある。僕としては、ウイルスは存在するし、地球は球体だと思っている。
地球平面説についての本を海外から取り寄せて読んだけれども、全然納得できなかった。僕のなかで一番ひっかかったのは、地球平面説ではコリオリの力の説明がつかないことです。
コリオリの力というのは、すごく雑にいうと「地球が回っている影響で、動くものが進行方向から少し横にずれる」現象のことをいいます。
19世紀にフランスのフーコーが巨大な振り子を使って、地球が自転していることを証明した。パリの民衆の前で公開実験までして、分かりやすく説明しました。これは高校生でも十分理解できます。

地球が平面でありながら、かつ、コリオリの力の存在を説明する理屈があれば、僕もフラットアーサーになったと思うけど、現状無理ですね。
特別展として、『氷河期展~人類が見た4万年前の世界』というのをやっていて、ある展示の前で、妻が声を上げた。
「あっちゃん!クロマニョン人そっくり!」

不忍池のそばで、いくつか屋台が出ていたので、ひと休み。

ビールを飲んでいると、サングラスをかけたガタイのごついスキンヘッドのお兄ちゃんが、こっちに向かって歩いてくる。迷いなく、まっすぐ僕に向かってくるので、僕は警戒した。
スキンヘッド氏はこう言った。「ひょっとして、中村先生ですか?」
「ええ、そうですけど」
サングラスを外しながら、「○○(某IT企業)に勤める●●です。昔、食事をご一緒にしました」
顔を見て、思い出した。僕が産業医をしている企業の社員さんで、以前、飲み屋でしゃべったことがある。
人口1400万人の街をふらっと訪れて、たまたま知り合いと出会う確率って、どれぐらい?こんな偶然あるんだな。
「チンピラにからまれて殺されるか思った」というと、笑いが起こり、緊張がほぐれました。

井の頭公園はきれいだった。忙しい街からちょっと離れたところに、こんなに落ち着いた公園がある。このギャップが東京の魅力でもあるだろう。

さて、肝心の『日本子だくさん会議』である。今回東京に来たメインの目的はこれを聞きに行くことだった。
【日本の現状】
日本は16年連続の人口減少で、しかも今年2025年は前年に比べて55万人以上減少するという、過去最大の減少となった。死亡者数の激増の原因について、ここでは触れない。
しかし、もう一つの問題は、出生数の減少である。少子化に歯止めがかからない。2024年に生まれた子供の数は68万で、前年に比べて5.7%減少した。合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)は1.15で、過去最低を記録した。
2023年に政府が出した推計によると、年間の出生数が68万人台になるのは2039年のはずだった。15年もずれたのは、政府の推計が楽観的すぎたせいである。
このままでは、2060年には人口は8600万人を割り込むという政府の推計があるが、やはり、これも楽観的な推計で、海外の調査機関によると、2100年までに日本の人口は5000万人を切るという予測もある。
【対策】
女性が「あと一人産んでみようかな」「もう一人産んでみようかな」、そう思ってもらうには、どうすればいいか。
講演では、「多子世帯(子供3人以上の家庭)の大学無償化」という案があったけれども、正直これが根本的解決になるとは思わない。
今回の講演会、僕は演者ではなく、ひとりの聴衆に過ぎなかったので、自分の意見は言わなかったけれども、僕が思うのは、不妊女性の増加です。
不妊に悩む女性は確実に増えている。不妊男性も増えている。
なぜなのか、ということです。
当然、社会毒の影響はあると思う。日本では、諸外国で使用が禁止されているような添加物や農薬の使用が認められている。

一例として、グリホサートの使用を禁じる国が増えるなか、日本はむしろ基準が緩和された。
これはあくまで一例で、添加物、薬、ワクチン、電磁波など、無数の社会毒が規制されることなく放置されていて、そんな毒性が女性から妊孕性を奪っていて、それが少子化の一因になっている可能性を指摘しておきたい。
社会構造の問題は、もちろんあると思う。女性が不安なく子供を産むためには、政治的・社会的支援は大事だろう。
働く女性が子供を託児所に預ける費用を国で負担する。それもひとつの方法かもしれないが、もっとうまいやり方はないものだろうか。
ある女性の言葉を思い出す。
「昔、ある友達家族と共同生活をしていたことがあります。私には小さい子供が3人、友達家族にも小さい子供が2人いました。私は正直、料理を作るのは得意ですが、子供の相手をするの苦手。友達は料理は苦手で、でも子供の相手は好き。
共同生活は最高でした。負担が半分に減って、楽しさは2倍になりました。
料理を作る量は倍になったけど、こんなの大した負担ではありません。でも、料理をしているあいだ、友達が子供を見てくれるのですごく助かった。友達としても、苦手な料理を私がやってるので、すごく楽になったと。
このときの経験から思うのですが、核家族というのは、非能率的極まりないですね。女性にはそれぞれの得意分野、苦手分野があります。料理、掃除、片付け、子供の相手、買い物。複数の家庭が共同生活して、それぞれの女性が自分の得意分野を担当して、共同生活に協力する。そういうことができれば、家事の負担はすごく軽減します。
これを実際にやっていたのが、縄文時代なんですね。縄文時代は、今でいうところの「家族」はなくて、村はひとつの共同体として機能していた。とても能率的だったと思います。
しかし現代はどうですか?核家族の現代にあって、女性は、料理、洗濯、掃除、子育て、すべてにおいて完璧が求められます。そんなの、土台できっこないんです」
昔、講演でプライス博士の業績を紹介したとき、以下の写真を見せた。
ネイティブのアラスカエスキモーの写真。

左上の女性には26人の子供がいた。
26人というのは驚異的で、現代の女性はどう頑張ってもそんなに生むことはできない。しかし妊孕性の問題については今は触れない。今考えたいのは、社会構造についてである。ひとりの女性が26人産んだとして、その26人をどう育てたのか。
共同体の助けがあったんだ。祖父母、叔父、叔母、隣のおかみさん、近所の子供たち。ある共同体に生まれた子供は、母親の子供であると同時に、その共同体の子供だった。だから、みんなで育てた。「子供はみんなで育てるもの」。そういう価値観があったから、この女性は安心して26人もの子供を産むことができた。

縄文時代の遺跡から、墓が見つかった。女性と子供が合葬されていたことから、親子だと考えられた。しかしDNA鑑定したところ、女性と子供はまったくの他人だった。
この女性と子供は、生前どんな関係性だったのか。想像するよりほかない。しかし、ひとつ同じ墓に葬られるぐらいだから、お互いに強い愛着があったのではないか。他人であっても我が子のように可愛がるし、子供のほうでも赤の他人の女性に強い愛着を持つ。それは、とても強い共同体だったと思う。それに比べると、現代で言うところの「家族」は、いかにも排他的で、独りよがりだ。
僕らの中に眠る、内なる縄文が少しでもよみがえることが、少子化解決のヒントになるような気がするのだけれど。