閉経後でも妊娠します

50歳女性
「不妊治療中です。39歳のときに採取した卵子を凍結保存していて、夫の精子と体外で受精卵を作り、それを子宮に戻すのですが、胚移植の段階で妊娠に至りません。27個凍結保存していた卵子も残り9個となりました。
分子栄養療法を実践し、血液検査で2か月ごとに評価し、栄養状態も調整しています。ホルモン療法で子宮内膜厚も11 ㎜程度まで増大してまずまずなのですが、うまくいきません。子宮よりは、凍結卵子のほうに何か問題があるのかもしれません。
7月下旬以降に胚移植の再度チャレンジ可能ですが、準備してから臨みたいと思っています。何か助言はないでしょうか」

非常に勉強熱心な人で、僕の過去記事はほぼすべて読んでいる。当然コロナワクチンは打っていない。たとえば、以前の記事で、妊孕性を高める方法として、ゲルマニウム、フルボ酸、麹などを紹介したことがあるけど、そういうのはとっくの昔にやっている。
https://note.com/nakamuraclinic/n/n9eb2bfd0aff6

最近僕は、妊娠するための条件として、年齢とか月経の有無はあまり関係ないのではないかと思い始めています。
昔、『70代でも妊娠します』という記事を書いた。
妊娠するのには、水が超絶重要という主旨で、これは今でもそう思う。水の汚染された地域で、高齢出産はあり得ない。

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https://note.com/nakamuraclinic/n/n72b80d012eca

たとえば、自然妊娠の最高齢記録(ギネスブック)として、1956年に57歳で女の子を出産したルース・キストラーの事例がある。

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この記録は、2007年、59歳で自然妊娠して男の子を生んだ英国在住の女性ドーン・ブルックによって更新された。

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日本の事例では、2021年に56歳で自然妊娠した鹿児島在住の女性が日本婦人科学会の学術誌に報告されている。

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2018年台湾の62歳の女性が男児を出産したという報告があったり、

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中国の67歳女性が自然妊娠したとの報道もある。

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自然妊娠ではなく、生殖医療の助けを借りた事例として、たとえば、

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2001年に60歳で出産した女性がいて、この人は自身の経験を本にして出版している。

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米国の研究者レイ・ピートの著書に、以下のような記述がある。
「イーストオックスフォードにある聖ペーター教会には62歳で出産した女性の記録がある。
古い医学会誌を見れば、閉経後からかなりの年月を経て出産した女性の例は数多い。
Depasseは59歳5カ月で子供を産んだ女性について報告している。赤ちゃんを授乳した状態で60歳を迎えたわけだが、この出産は閉経から10年も経った後のことである(Gazette Medical de Liege, Oct. 1, 1891)。
有名なアメリカ人医師ベンジャミン・ラッシュは60歳で出産した女性について報告している(Medical Inquiries and Observations, Philadelphia, 1805)。
ウォレスはオークニー島在住のある女性が60歳を超えて出産したと報告している(Philosophical Transactions of the Royal Society of London, vol. xxii, Page 543)。
70歳で出産した症例も複数あるし(L’Union Medical du Canada, Montreal, Dec. 3, 1881)、もっと高齢で出産した例もある(Mayham, in Medical Standard, Chicago, Jan. 1891)。

女性は高齢での出産を恥じるものだが、これは社会の側が高齢出産をタブー視していることが一因だろう。また、社会は、不妊カップルを見たとき、女性の側に原因があると思いがちである。しかしこれは明らかに間違っている。たとえば、先天異常は父親に原因があることも多々あることを私は実証したが、近年それを支持するエビデンスがますます増えている。「ダウン症は高齢女性が原因」というのも、私は一概にそうとは言えないと考えている。
男性が、女性が妊孕性を失う年齢をはるかに超える高齢になっても、生殖能力を持つことは、皆の知っている通りであるが、高齢男性が若年男性と等しい生殖能力を持っているわけではない。たとえば、47歳で閉経した女性が、52歳のとき、22歳の男性と結婚し、53歳のときに出産し、さらに翌年54歳のときにも出産した事例が報告されている。(Cachot, in Pacific Medical and Surgical Journal, vol. xxvi, page 394, 1883)
生殖とは、女性だけが行うものではない。男女双方が行うものであるのだから、両者の健康状態が等しく重要であることは当然のことである。女性の生殖能力にとって、甲状腺、プレグネノロン、ビタミンEが不可欠であるが、これは男性にとっても同じことである。実際、甲状腺のサプリやプレグネノロンのサプリを飲むだけで、男性の精子数が増加することが分かっているが、これはこれらのサプリによりストレスの影響が緩和されたためである。

甲状腺ホルモン、特にT3(トリイオドサイロニン)は、妊娠の開始に必要なエネルギーを生み出すのに必須の要素である。また、十分な血中コレステロールがない状態では、体内で十分なプロゲステロン(およびその他のステロイド)を産生することは不可能である。妊娠の成立のためには、カロテンが多すぎてはダメだし、逆にビタミンAが少なすぎてもよくない。マグネシウムナトリウムが不十分ではダメだし、コルチゾルが多すぎてはいけない。これらは不妊の原因として見過ごされがちである。

妊娠中にも数か月間、月経様の出血を経験する女性は珍しくないものだし、そういう出血がない場合でも、子宮頚管の粘液を調べると、エストロゲン優位になっていることがよくある。こういうときは流産の確率が高い
流産の確率が最も高いのは妊娠9週目である。この時期は、ちょうど胎盤が卵巣からホルモン産生の大部分を引き継ぐタイミングであり、プロゲステロン/エストロゲン比率が一時的に低下する時期でもある。プロゲステロン/エストロゲン比の低下は、通常の月経の特徴であり、これが妊娠中に低下しては、何らかの出血や、粘液の構造変化が起こったり、場合によっては流産することもある。
エストロゲンは酸素の供給を低下させ、プロゲステロンは逆に、酸素供給を増加させる。エストロゲンにより酸素供給が低下すると、血管の拡張により血管が痙攣し、出血が起きる。つまり、胎児が発育する速度と質は、エストロゲンとプロゲステロンのバランスの影響を受ける。

動物実験では。妊娠中のどの段階であれ、エストロゲンを一定量投与すると妊娠の中絶が起こる。エストロゲン優位の状態では酸素欠乏が引き起こされるためである。エストロゲン過剰による酸素欠乏は、妊娠初期であれ後期であれ、流産の最大のリスク要因である
胚は受精して6日目になると突如酸素を必要とするようになるが、これはちょうど、着床の準備が整うタイミングである。妊娠初期ではプロゲステロンの産生量が比較的少ないため、ごくわずかなエストロゲン過剰でも胚の着床が妨げられることになる。妊娠後期であっても、プロゲステロンの作用を打ち消すほどのエストロゲン投与は、胎児を死に至らしめることになる。
少量のエストロゲンであっても、たとえば脳の成長を止めるなど、胎児の成長が影響を受ける。妊娠後期においては、わずかな酸素不足でも代償的にグルコースの過剰消費が起こり、結果として低血糖になる。この低血糖は母体に症状を起こし、胎児にもダメージを与える。
妊婦に見られるつわり、視力の一時的低下、けいれんなどは低血糖による症状であり、特に妊娠5カ月以降は胎児の脳が急成長し多量のグルコースを必要とするため、そうした症状が顕著になる。

プロゲステロン/エストロゲン比のバランスが適切で、かつ、十分な栄養(タンパク質、グルコース、ナトリウムなど)があれば、血流が維持され、妊娠中のこうした問題は起こらない。
体温と脈拍は毎日チェックしたほうがいい。代謝が適切であるか判断する一助になるだろう。また、天然のプロゲステロンを投与することは、妊孕性を改善し、流産を防ぐのに有用である。妊娠前にプロゲステロンを服用していた女性では、先天異常の発症率が有意に低かった(通常の10分の1)。また、妊娠中にプロゲステロンを服用していた女性では、出生後の児の健康状態は極めて良好だった。妊孕性に好影響を与えるものは、妊娠の継続および児の健康にとっても好影響を与えるのである」

僕は最近、女性患者によく天然のプロゲステロンやプレグネノロンを処方します。
PMS、更年期障害、婦人科系の癌(乳癌、卵巣癌、子宮癌など)を見れば、まず、エストロゲン過剰を疑う、というのを基本方針にしています。
農薬とか添加物、様々な生活毒、PFASとかダイオキシンとかビスフェノールAとか、現代の毒の大半は女性ホルモン(エストロゲン)のような作用をします。だから、普通に生活しているだけでも、プロゲステロンと比べて、相対的にエストロゲン過多に傾きがちです。
レイ・ピートは、著書のなかで「エストロゲンは万病のもと」ぐらいの勢いでエストロゲンの危険性を訴え、かつ、プロゲステロン(およびプレグネノロン)の重要性を言っています。

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恐らく冒頭の相談者は、不妊治療の一環として、合成のエストロゲン製剤やプロゲステロン製剤(プロゲスチンとか)を投与されていると思います。主治医先生がおられることなので、あまり部外者の僕がとやかく言うのは何ですが、個人的にはこういう合成のステロイドホルモンは感心しません。僕は最近、ビタミン剤でさえ、合成のものは避けるようになりました。妊活でサプリを飲むとして、合成のビタミンEとかAはよくないよ。
ただ、上記の複数の事例を挙げたように、現代の生殖医療の助けを借りて、高齢で出産している女性が多数いるのも事実としてあります。
とにかく、50歳だからといって希望を捨てることはありません。後悔のないように頑張りましょう。

>中村篤史について

中村篤史について

たいていの病気は、「不足」か「過剰」によって起こります。 前者は栄養、運動、日光、愛情などの不足であり、後者は重金属、食品添加物、農薬、精製糖質、精白穀物などの過剰であることが多いです。 病気の症状に対して、薬を使えば一時的に改善するかもしれませんが、それは本当の意味での治癒ではありません。薬を飲み続けているうちにまた別の症状に悩まされることもあります。 頭痛に鎮痛薬、不眠に睡眠薬、統合失調症に抗精神病薬…どの薬もその場しのぎに過ぎません。 投薬一辺倒の医学に失望しているときに、栄養療法に出会いました。 根本的な治療を求める人の助けになれれば、と思います。 勤務医を経て2018年4月に神戸市中央区にて、内科・心療内科・精神科・オーソモレキュラー療法を行う「ナカムラクリニック」を開業。

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